あなたの色に染められて
第20章 点と線
『本当に先生の助手が勤まってるの?迷惑かけてませんか?』
『そんなことないですよ。お母さん。璃子さんは大切な僕の右腕ですから。』
『ほらね。けっこう私頑張ってるのよ私』
『良かったな。達也さんのおかげで好きな英語を仕事に活かせるなんて。でも…あっちにいっても無理はするなよ。』
『うん。ありがとうパパ』
来週 俺たちはアメリカに飛び立つ。
その前にきちんと璃子のご両親に筋を通したくて 挨拶も兼ねて食事に誘った。
璃子のご両親は京介くんとのことで大事な一人娘が苦しんでいたのを知っている。
特にお母さんには女同士と言うこともあり色々と相談してきたと璃子は言っていた。
だから 俺は今回の席を設けたんだ。
向こうで俺の助手として働いてもらうこと 一緒に住むこと……そして
『あの。初対面でこんな話はすることじゃないかもしれませんが…』
俺たち二人のこと
『私は璃子さんと将来のこと…考えてますので。』
きちんと話した方がいいと思った。
『えっ…。』
『ハハッ。璃子にはまだ言ってなかったか。』
頬を赤らめる璃子。優しく微笑む璃子の両親。
『いい人見つけたね。璃子。…ねぇあなた。』
『達也くん。色々と迷惑お掛けしたと思いますが… 璃子のことよろしくお願い致します。』
『あっ。…いゃ。…こちらこそです。』
前の彼も知ってるご両親。こうやって俺たちに笑顔を向けてくれるってことは どれだけ璃子が傷ついたんだって。……苦しんだんだって。
『でも 夏の予定だったわよね。出発って』
『ママ。…だからごめんねって。…私のわがままなの』
璃子俺に「早く日本から離れたい」って ポツリと呟いたんだ。
それはきっと早くリセットしたいって。まだ心の中にいるアイツを忘れたいって。そんな心の叫びで
時折見せる璃子のどこか寂し気な表情。どんなに抱きしめてオレの温もりを分けても たぶん俺には解消できないこと。
時間がきっとあの苦しみから解放してくれる。新しい環境がアイツをまたひとつ成長させてくれる。
『私たちもこれから二人だし璃子たちに負けないぐらい仲良くしなきゃね。あなた。』
微笑み会う二人。
こんな素敵なご両親に育てられた璃子を大切にしないと… 改めてそう誓った夜だった。