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あなたの色に染められて

第20章 点と線



『璃子ぉ。そっちの紐とって。』

『ハイハ~イ』

『よしこれで…』

『OK?』

私たちは明後日アメリカに旅立つ。

あの日 私はたっちゃんの背中に腕を回して京介さんとの日々にピリオドをうった。

たっちゃんと過ごす日々。彼の大きな心に包み込まれた私は彼の気持ちに甘えて過ごしてきた。

あの日以降も 心の整理がつかなかった私。

泣き腫らした目をした私にそれさえも愛らしいとその都度 抱き寄せてくれた たっちゃん。

そんな彼の優しさに触れる度に私の心から少しずつ悲しみや寂しさが消えていく。

『…璃子。なぁ。本当に…』

『…たっちゃん。もうしつこい!』

出発を明後日に控えても私の気持ちを確認したりして… ホントに感謝してる。




昨日 美紀から京介さんが球納めのDVDを見たらしい と連絡をもらった。

「やっぱ ダメだったって。…あれ見ても思い出せないって。」

「うん。」

なぜか安心してしまう私。

「所々 なんとなく わかるところもあるみたいだけど…全然。」

「…だからいいって言ったのに。」

もう いいんだって

「直也のことすっごく怒っといたから!ふざけんな‼って」

「フフッ。直也さんは悪くないでしょ。…でも…あのDVD見てまた頭痛が酷くなってなければ良いけど…」

「…璃子ぉ…」

私はあれだけ待つといった京介さんの手を自ら離したんだから 心配なんてもうしなくてもいいのに。

「ゴメンゴメン。」

「でも 京介さん 記憶がないのにも関わらず璃子に心動いてたんだよ。ねぇ。ホントに…」

美紀はどっちの彼を応援してるんだか…

「だから 美紀。…ウフフ。しつこい。」

「だってぇ~」

きっと 美紀は誰よりも私のことを心配してくれてる。

「見送りにも行けないし… 今日だって夜勤だし…」

「いいからいいから。看護師さん。頑張って!」

会えないのは寂しいけど

「私たちの結婚式には帰ってきてよね。」

「えっ!…うそ!決まったの?」

「決まってないけど~。キャハハ。」

「キャハハ。もう!…でもさ 決まったら言ってね。どんなことがあっても絶対に行くから。」

これだけ私のことを考えてくれる美紀のためならね。

「帰って来るときは連絡するんだよ。」

「うん。…ありがと。美紀。」

美紀こそ幸せになってね。

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