あなたの色に染められて
第20章 点と線
『おい。聞き出せたか?』
『……ダメ。全然教えてくんない。』
スタンド席で溜め息を吐く男3人。
『はぁ。お前の女どうなってんだよ。』
『俺だって…美紀が風呂入ってるときにスマホも見たんだよ。でもさ ロックかかってて…いろんな数字入れたんだけど…』
来週とは聞いていたけど 出発日も聞いてなければ時間も聞いていない俺たち。
なんとか 京介さんを空港まで連れていこうと策を練るけど わからないんじゃ始まらないわけで
『俺が聞いてもダメだったからなぁ。』
そう。長谷川さんが頭をを下げたって美紀は断ったんだ。
理由は一つ。やっと幸せになった璃子ちゃんのため。
これ以上苦しめるなと。
そして 肝心なのが京介さんと遥香さん。
記憶がない上に 遥香さんに都合よく話もねじ曲げられてるようで…
幸乃さんも交えて話し合い 遥香さんにかなり泣きつかれてけど なんとか別れられたらしい。
『事故の時に無くなったスマホは…?』
『あぁ。やっぱり遥香が持ってた。これから届けに来るって。』
『もうそろそろ…ほら。あそこ。』
佑樹さんの指差す先に 遥香さんと幸乃さん。
遥香さんは相変わらずなあの態度。 幸乃さんは後ろを向いていて表情は見えない
……一瞬だった。
『うわあっ……』
『……マジ』
『痛そう…』
幸乃さんは遥香さんの頬に平手打ちした。
呆然とする遥香さんを置いて クルッと向きを変え 俺たちの方に歩いてくる。
『幸乃さんやるぅ。』
『やだぁ。見てたの~。』
おとなしそうな顔している幸乃さんが 実は一番男前だったりする。
『あれは…璃子ちゃんの分。一発じゃ足りないぐらいだけどね。ふふっ。』
『さすが…俺のカミさん。』
長谷川さんは幸乃さんの肩を抱き寄せて
『…コラッ。調子に乗るな』
顔を赤らめた幸乃さんに怒られて…
スッキリした。一発叩いてもなにも変わらないけど… でも それは俺たちにとってすっごく大きな一歩で。
俺たち4人 顔を見合わせて笑いだした。
このスマホにはきっと二人しか知らない色んな事が入ってるはず。
写真やらメールやら…
きっとそれは記憶を戻す最後の一手。
『このスマホに最後は賭けますか…』
長谷川さんがギュッと握りしめる。
俺たちの思いをスマホに注ぎ込むように…