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あなたの色に染められて

第20章 点と線




『暑っち~。ビールビール。』

俺は風呂上がり 短パンにバスタオルを首から下げて 冷蔵庫からビールを取り出す。

『ッカァ~。これだよこれ。』

ソファーにドッカリと座り 充電しておいたスマホの電源を入れてみる。

『おっ。点くじゃん。』

練習終わりに長谷川さんから渡された 失くしたはずのスマホ。事故のあと遥香が持っていったようで。

俺はそんなことも知らずに 新しいスマホを手に入れちゃってて。

……俺 ロックしてたんだ

ロックを解除して…

思い当たる番号をいくつか押す。

…開かない。

俺の誕生日でも キャッシュカードの暗証番号でもない。

家族の誕生日も入れてみるけど…

ダメじゃん。

これじゃ 手にいれたのに何にもなんねぇ。

はぁぁ。

大きく溜め息をついて ビールを流し込み 目を閉じる。


そして…

もう一度

……0314

ビンゴ。

指が勝手に動いた数字。

どうしてこの数字?ホワイトデー?

……うっ。…痛ぇ。…まただよ。

頭痛が始まる。




写真フォルダをあけると

……フフッ。なんだよこれ。

自然と顔が緩だ

それは 色んな表情の璃子ちゃんでいっぱいだった。

いつものあのとびきりの笑顔

口を尖らせて拗ねた顔

たいして怖くもない怒った顔

ピンク色のエプロンを着けてキッチンに立つ後ろ姿。

……そして

口をほんの少し開けて 俺の腕のなかで眠る愛らしい寝顔。

…二人で撮った写真も

一枚ずつスライドする度にどれだけ俺が惚れてたのかわかる。

だって 俺 すげぇ笑顔なの。

どの写真も目を細めちゃって 肩を抱き寄せて 頬をくっつけて

真っ白なシーツの上で キスをしてる写真まであったりして

二人で撮ったはじめての写真はテーブルにろうそくが灯り 二人ともまだぎこちなく寄り添い 頬を染める俺と璃子ちゃん。

夏樹さんの店?……だと思う。

夏樹さんにまで会わせたんだ。


『すげぇ 惚れてたんだ…』

こんなに写真を見たって甦らない記憶。

“愛してる”の意味か……

……俺にも教えてよ

……璃子ちゃん

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