
あなたの色に染められて
第21章 遠い空
『……どこ行った?』
リビングにキッチン…
俺の部屋にもいな………いた。
真っ暗な部屋の揺れるカーテンの向こう バルコニーの手すりの上に腕を乗せ 体を預けるように凭れかかり空を見上げる璃子
闇に浮かび上がるその姿を目にすると 抱きしめずにはいられなかった。
『こんな所でなにしてんの?』
『……たっちゃん。』
お腹に回した俺の手に璃子の柔らかい手が重なる。
『月を見てたの。ほら。』
雲ひとつない夜空に 欠けるのところのない円く満ちた光
『……満月か…道理で明るいわけだ。』
璃子の髪にキスを落とし 指を絡める
『ママからメールが来てたの。今日は満月だったよって。』
空を見上げて微笑む璃子は俺の前で日本のことをあまり話したがらない。
それはきっとまだアイツを思い出してしまうからだと思う。
時折見せるどこか遠くを見るような瞳。その瞳は儚くて 切なくて…
『…たっちゃん。』
『…ん?』
『いつもありがとう…』
璃子は振り向き微笑んだ。
『…どうした?急に。』
『いいの。』
クスクスと笑いながら 俺の顔を見上げる。
『なんだよ。……言わないなら …』
『…なら?…ウフフ』
もっと キツく抱きしめて
『キャッ。もう!』
『……満月の夜だしぃ…』
『…だしぃ?』
クスクスと笑いながら 首を傾げて
『……男は狼だしぃ』
『……。』
璃子の体が固まった。
……ヤバっ!
『ウソウソ。冗談。冗談だよ。』
あぁ。地雷踏んだな。
頭をガシガシと撫でて ギュッと抱きしめて左右に大きく体を振って。
『ウソだって。ゴメンゴメン。』
そう。これでいいんだよな。
璃子は俯き 繋がれてた手をそっと離した。
『悪かったって。明日出掛けるんだろ。早く寝ようぜ。』
部屋に戻ろうと璃子の肩に手を伸ばすと
『……たっちゃん。』
小さな声だった。
『だから~。ゴメンって。おじさんが悪かったって。』
俺のシャツの裾を掴んで
『……いいよ。…もう。』
それは本当に小さな声で
『…どした?』
『……。』
璃子の細い腕が俺の背中を抱き寄せて
『……璃子?』
小さく息を吐くと
『……抱いて…』
『えっ?……』
胸に頬を寄せて
『……抱いてください。』
俺は璃子の頭に手を添えて キツく抱きしめた。
