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あなたの色に染められて

第21章 遠い空




『……ん?…雨か…』

窓を叩く雨音は 昨夜の満月を追いやったのだろう

壁の時計に目をやる

……もう9時か

腕の中には 白い肩先を覗かせて俺の胸に顔を埋めるようにして眠る璃子。

顔を覆う柔らかい髪を指で掻きあげると

『フっ。…口開いてるし。』

まるで子供のような愛らしい寝顔で

昨晩 漏れる声を吐息に変えて 俺の背中に必死にしがみついていた璃子ではなかった。

少し腫れている瞼に親指をそっと這わせる

『まだまだか…』

璃子は抱かれながら涙を溢していた。俺はその涙を何度も唇で拭い抱いたんだ。

きっと 俺に抱かれながら アイツを忘れようとしていたんだと思う。

額にキスを落として きつく抱きしめて璃子のぬくもりを素肌でもう一度確かめる

『……たっちゃ…ん?』

愛らしい 寝ぼけ眼で俺の顔を覗きこむ

『……おはよ。ブス。』

『すぐにブスって言う…』

口を尖らせてクルッと俺に背を向けて

『ハハッ。いいの。俺好みのブスだから』

『……もう。意地悪。』

きっと さっきよりもっと口を尖らせて

首筋にキスをして もう一度俺の腕の中に包み込む。

『なぁ。こっち向いてよ。璃子。』

『……たっちゃんの意地悪。』

そう言いながらも もう一度クルッと向きを変えて 俺の胸に耳を寄せた。

『…聴こえる?』

『……うん。聴こえるよ。』

そう言って クスクスと笑いながら耳をさらに強く押し当てて

『どんな音ですか?…璃子センセ。』

『えっとですねぇ。ウフフ。おはようのキスがしたいって聴こえますねぇ。』

『じゃあ お薬を璃子センセイからもらいましょうか。』

『…私からですか?』

自分で言ったくせに 耳まで紅く染めて

『……早く。センセ。』

俺からしたっていいんだけど… でもそれじゃ二人で新しいスタート切れねぇだろって。

『え~。』

『……ほら。』

額をくっ付けて 微笑みあって

『じゃあ~。目 瞑ってください。』

『……ハイ。センセ。』

……チュッ。

触れるだけのキスだった。それでも璃子らしくて良かったんだけど…

『そんなんじゃ 効くわけねぇだろ。』

『……んっ。』

もっと 愛してやりたいから…

『……苦しいよぉ』

『センセ。…お静かに。』

誰よりも……誰よりも…

……愛してやりたいから

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