あなたの色に染められて
第22章 揺れる思い
『相変わらずですなぁ。』
『ホントですよねぇ。選り取り見取りなのにねぇ。』
『マジで俺に一人分けてほしいんだけど…』
トイレから席に戻るのにマネージャーたちに捕まって 足止め食らってる京介さん。
きっと職場でも声を掛けられてるモテモテ男。でも 一番聞きたい声はいまだに聞けていない。
『俺たちは寂しく熱燗でも呑みますか。』
『寂しいのは佑樹さんだけでしょ』
季節はもう冬になると言うのに 美紀からのお許しはいまだに出ず 俺はもどかしい日々を送っていた。
『……はぁ。』
それは俺以外の諸先輩方も一緒のようで
『まだ連絡とれないの?』
こういった場面を目にする度に確認を取るんだ。
… 最近は俺の目の前でも平気で璃子ちゃんと電話し出す美紀なんだけど…
……言えねぇ。……言わしてもらえねぇ。
だって 隣で睨みを利かせる俺の愛しい女にすべてを託してるから。
『あ~。マジ勘弁なんだけど…』
やっと逃げ出して大袈裟にため息ついて腰を掛ける京介さんはお猪口を見て
『熱燗いっちゃってるの?…じゃ俺も。』
夕方から降り始めた雨のせいできっと明日は練習が中止だとふんだ俺たちは久しぶりに 呑みモードになった。
『美紀ちゃんも日本酒いけるんでしょ?』
『……ん~。…いっちゃいますか?』
今の段階でホロ酔い気分の美紀も珍しく俺たちに合わせて参戦。
嗜む程度に呑めばいいものをお猪口が空になる前にみんなに足されて いつもより早いペースの美紀
長谷川さんの肩をペシペシと叩いてケタケタ笑いだしたら そろそろヤバイ予感。酒に呑まれる前にお猪口を取り上げたときだった。
『ねぇ 美紀ちゃん。璃子元気にしてる?』
京介さんは美紀に優しく微笑みながら
『璃子向こうでちゃんとやってる?』
さっきよりも輪をかけた優しい笑顔でお猪口片手に美紀に問いかける。
美紀は何を思ったのか俺をキッと睨みつけて無言で問いただすけど
言ってねぇって 信じてくれって 俺は首をブンブンと横に振った。
マジでどうなってんだよ~。
俺言ってねぇし…
取り上げたお猪口を美紀は俺の手から取り返して残ったお酒を一気に呑み干して また睨まれる。
『すいませーん。熱燗2本。』
この状況で追加注文しちゃう京介さんの愛の力は半端なかった。