あなたの色に染められて
第3章 二人で
カランカラン。
『どうも~。』
『いらっしゃいませ。』
連れてきてもらったお店はカジュアルなイタリアンレストランだった。
店内は少し薄暗いけど各テーブルに背の低いキャンドルが灯されていてとてもステキな空間
『悪いな 璃子ちゃんを連れてこれそうな店ココしか知らなくて。』
『いえ…私こんなステキなお店はじめてです。』
『ホントに? ここ俺が大学行ってたときにずっとバイトしてた店なの。 』
店内を見渡せば木のぬくもりを感じさせる落ち着いた店内
『こんな素敵なお店でバイト…。もしかしてお料理作ってたんですか?』
『ううん俺はサーブ。料理は全然ダメなの。』
なんでもテキパキと器用にこなすイメージがあったけどそうなんだ。
京介さんにも苦手なことがあるんだ。
『なんだよニヤニヤして。それよりはいメニュー。何食べたいの? 』
京介さんはテーブルの真ん中にメニューを開くと
『ここのは何でも美味いから。』
定番のパスタやピザから私の知らない本格的なイタリアンまで
『みんな美味しそうで迷っちゃいますね。』
前菜からオードブルまでどれを選んでも外れはなさそうだけど…
『色々食べたいならシェアしようか?』
『それいいですねぇ!京介さん選んでください。私こんなにあるから迷っちゃいます。』
『じゃあ…俺に任せてもらおうかな?』
京介さんは流すようにメニューに目を通すと
『すいません。』
手を挙げて店員さんを呼び
『前菜の盛り合わせとウニのクリームパスタ。璃子ちゃんはアンチョビ大丈夫?』
『はい。』
『じゃあ アンチョビのサラダピザ…それと…』
テキパキと注文していく姿はいつ見ても感心する。
どんなときも決断力があるって言うか 行動力があるって言うか…
でもそれが 全然イヤミじゃなくて
『飲み物は…璃子ちゃん少し飲める?』
『はい。』
『じゃ、夏樹さんに任せるって伝えてください。』
パタンとメニューを閉じると私の顔をマジマジと覗きこんで
『なんだよ。さっきからニヤニヤして。』
『いや 別に…すごいなぁって。』
『何がだよ。』
前髪をすっと直しながら微笑んだ。
不思議だった。
あれだけ男の人が苦手だったのに 今の私はその苦手な男の人と向き合って微笑んでる。
楽しい夜になりそうだな。