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あなたの色に染められて

第3章 二人で


『いらっしゃい。久しぶりだな。』

カウンターからワインボトルとグラスを器用に持った男性がテーブルに近付くと

『ご無沙汰してます夏樹さん。』

京介さんはニッコリと微笑んで挨拶をした。

『紹介するね。俺が大学の頃からずっと世話になってるこの店のオーナーの夏樹さん。』

『はじめまして高円寺璃子です。』

『はじめまして。今野夏樹です。今日は来てくれてありがとう。』

夏樹さんは見るからに仕立ての良さそうな黒いシャツを着てオーラがあるって言うのかな

どっしりと構えてるんだけど威圧感はなくて

『珍しいじゃん女の子連れてくるなんて…もしかして彼女?』

それは目尻のシワのせいなのかな。

『いやそれがですねぇ…』

京介さんは私の方にチラッと視線を送りながら

『まだ彼氏にしてもらえてないんすよ。』

溜め息混じりに微笑んだ。

『ははっ。百戦錬磨の…あの選び放題な京介がか…アハハっ…選んでもらえないんだ。』

百戦錬磨?選び放題?

『夏樹さん勘弁してよ。璃子ちゃん固まっちゃってるじゃない。』

『ゴメンゴメン。コイツはいい奴だからよろしく頼むよ。』

京介さんの背中をドンと叩いて面白そうに笑う夏樹さん。

『えっ…あっ…』

『だから、まだなんだって。』

『ハハっ。悪い!悪い!このボトルサービスするからゆっくりしてってよ。』

そう言って夏樹さんは踵を翻しカウンターに戻っていった。

『ウフフ。』

なんだかまた違う京介さんに出会えたな。

『なんだよ。またニヤニヤして。』

あのクールな京介さんが拗ねてる。

『百戦錬磨ですか…うふふ…選び放題ですか…うふふっ。』

頬を膨らませて唇を尖らせて

『そんなことないって…あーもう!すげー調子狂うよ。』

京介さんはテーブルに両肘をつき顔を覆い大きく溜め息をついた。

私は自然と京介さんの頭に手を置き 彼がいつも私にしてくれるように優しくポンポンと撫でた。

『はいはい……百戦錬磨さん。』

『覚えてろよ。』

こうやって 逢うたびに話すたびに、触れるたびに京介さんに惹かれていく。

きのうよりも…… 1時間前よりも……
1分前よりも…… 1秒前よりも……

もう 私の気持ちは止められない

『笑うな。』

『笑ってませんよ。』

あとは私の勇気だけか…

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