あなたの色に染められて
第3章 二人で
『んーっ!これもおいしぃ。ぜーんぶ当たりですね!』
こういう時普通なら女の私が気を利かせて取り分けなきゃいけないのに 京介さんはスプーンとフォークを器用に使って私のお皿を美味しいもので埋め尽くしてくれた。
『璃子ちゃんは美味しそうに食べるな。』
『ゴメンナサイ…食べ過ぎちゃってますか?』
取り分けてもらった料理を遠慮することなく平らげていく私
普通の女の子なら「もうおなかいっぱい…。」なんて 可愛く言うんだろうけど後の祭り。
これだけ食べちゃってれば遅いよね…。
『俺 遠慮して残す女とか嫌いなんだよ。』
京介さんはグラスを片手にいつもの優しい目をさらに細めて
『だから嬉しい。』
その優しい目がとっても心地よくて お酒の力を借りた私はさらに気持ちが舞い上がっていった。
*
一通り食事を終えると
『はい うちで一番人気のドルチェのアフォガード。』
そう言ってコーヒーの香りを纏ったアイスクリームを夏樹さんが差し出してくれた。
『うわぁ…美味しそう!』
『なんかあっちから見てたら 野球ばっかりして一年中日焼けした真っ黒な京介と色白で可愛い笑顔の璃子ちゃんみたいだったから。』
一口掬うとエスプレッソの香りがフワリと漂って
『いい香り…いただきます。』
バニラジェラードがとろりと蕩けてスプーンから今にも溢れてしまいそう。
…パクっ
『本当ですね。京介さんみたいな味。美味しぃ…。』
『何で俺なんだよ。』
『でしょ?璃子ちゃん。』
そう言って 夏樹さんと目を合わせて笑った。
『だから何で俺の味なんだって?』
肘をテーブルについてプウッと頬を膨らて こんな可愛い表情もする
『美味しいですね。』
知らない京介さんに出会うたび私の胸の鼓動が大きく高鳴った。
*
『夏樹さん 美味しかったです。』
『また二人でおいで。サービスするから。』
『はい!今日はホントにご馳走さまでした! 』
楽しい時間はあっという間にすぎてしまう。
『じゃ、京介…ちゃんと送ってけよ。くれぐれも送り狼に…』
『夏樹さん!』
京介さんに開けてもらったドアを潜り抜けると 来たときよりも少し冷たい風が肌にあたる。
気付けば大きな手のぬくもりを求めてる小さな私の右手がそこにはあった。