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あなたの色に染められて

第26章 Irreplaceable person




『なぁ…言ってよ…』

『…京介さん…』

璃子の腕を掴んで真意を問う。

前の男と比べる俺って どんだけ小させぇ男なんだって

『…そんなに俺 頼りねぇ?』

『…そんなこと…』

璃子はまた俺をおいてあの医者のもとへ旅立ってしまう。

『…アイツには言えて…俺には言えない?』

『…京介さん…』

璃子の目から涙が零れた。

言ってはいけない言葉だってわかっていた。

でも 不安で押し潰されそうな俺

涙を零させるほど苦しめてる情けねぇ俺

目を逸らしソファにボスっと寄りかかった。

璃子はこんな情けない俺の背中に腕を回して胸に頬を埋めた。

『…言わないんじゃないの…京介さんの好きにしてほしいの。』

『……。』

璃子の背中に腕を回しもしない俺って何様なんだろ。

『…私は…京介さんのモノでしょ?』

『……。』

璃子を苦しめてるのに コイツはいつでも俺の心をぶち抜く。





『ねぇ…京介さんだけのモノですよね?』

『……。』

きっと私たちは同じように不安で押し潰されそうな心をしている。

これからまた離れ離れになって こうやって肌の温もりさえも確かめあえない。

『…ねぇ…京介さん。』

『……。』

やっと目線があったその瞳はまだ哀しげで

背に回していた腕にもう一度ギュッと力を込めて胸に頬を埋めた。

耳に聴こえる鼓動は たっちゃんよりも強くて大きな音

『…璃子は俺のモノなんだよなぁ?』

『…はい』

『俺だけのモノなんだよなぁ?』

『…そうですよ…京介さんだけの……えっ!』

顔を上げ鋭い視線と重なったときだった。

急に抱き抱えられたと思ったら寝室に運ばれ ベッドに投げ落とし

私の顔の両側に手を付いて射抜くような瞳で私を見下ろす。

『…だったら脱いでよ…』

『…え…』

『…俺にわかるように脱いでよ…』

『…京介さ…』

逸らすことのない彼の瞳の奥は揺れて 嫉妬という海の中で藻掻き苦しんでいる。

『早く脱げって言ってんだよ!』

こんな京介さんは始めてだった。

言われた通りにパジャマに手をかけ 震える指先でひとつずつボタンを外していく。

京介さんは目線を外すことはない。

今の私が京介さんのために出来ること

…それはすべてを脱ぎ去り服従することだった。

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