
あなたの色に染められて
第26章 Irreplaceable person
瞳を潤ませてひとつずつボタンに手を掛け 背中を浮かせ 腰を浮かせ脱いでいく。
一瞬俺と視線を合わせた後 最後の一枚を細く白い脚から脱ぎ去ると生まれたままの姿になった。
1年前となにも変わらない白くて俺を引き付ける艶やかさ。
止められなかった俺の感情をこの小さな体を震わせながらコイツは精一杯受け止めてくれる。
別に璃子の体を見たかったわけじゃなかった。
ただ俺のモノだって言う確証が欲しかった たったそれだけ。
言って後悔したってもう遅かった。
頬を伝う涙をそっと指で拭うと 璃子は両腕を胸の前でクロスさせ片膝をくの字に折り 目を閉じた。
閉じた瞼から涙が零れ続ける。
くだらないただの嫉妬。これから迎える夜を望んでいたのは俺なのに
優しく包み込んでもう一度俺色に染めていくはずだったのに
目の前の愛しい女は唇を震わせ小さく息を吐き雫を零す。
『…璃子…』
少しウェーブがかった髪に指を通しそのままゆっくりと抱き起こした。
胸を隠す小さな手を剥がし俺の両手で包み込んだ。
『…ごめん……ごめんな…』
璃子は俯き首を左右に振って涙を落とす。
『こうやって 俺が璃子を守らなきゃいけないのに……なにやってんだ俺…』
『…ううん。』
璃子は包まれている自分の手を一度離して 指を絡めてくる。
『…私も守ってあげたいです。一方的じゃなくて二人でこうやって。』
『…ごめんな…』
真っ赤な目から涙を零し続ける璃子が顔を上げて俺に微笑むと
『…私…この手が』
ふぅっと一息ついた後もう一度俺の目を見て優しく微笑み
『ううん…京介さんじゃなきゃダメなんです』
『……。』
『待てなかった私を…裏切った私を…許してください…』
『…そんなこと…』
『私は…京介さんのものだって…刻んでください。』
こんな台詞まで言わせてしまう俺は本当に不甲斐ない男で
『私には…京介さんじゃないと…ダメなの…。』
璃子を引き寄せて抱きしめることしか出来ない男で
『ごめんなさい…京介さ…ごめんなさい…。』
俺の背中に腕を回して 何度も何度も縋るように謝る璃子は 俺よりももっと苦しんでいたはずなのに…
『…謝るのは俺だって言ったろ。』
それでも泣きながら首を振り 謝り続ける璃子をさらにきつく抱きしめた。
