テキストサイズ

あなたの色に染められて

第27章 お気に入りの場所



『もうそれ持ってますよね?』

『わかんないかなぁ…ここのデザインがちょっと違うだろ』

『わかりませんよ…』

『やっぱ スパイクはこのメーカーだな』

新しいデザインのスパイクを見たいと 京介さんの希望で訪れたのはショッピングモールの中に店舗を構える大型スポーツ用品店。

試着してしまえば買ってしまいそうなこの勢い。

『…もうたくさん持ってるのに…』

野球がお休みの日だって結局は野球三昧。

『 見て見て どう?』

本当に少年のようにニコニコしながら角度を変えて足元を見せる京介さん

『いいんじゃないですか…』

『だろ~』

下見の予定だったけど このままだときっと…

『すいませーん!…じゃ これで。』

ほらね。買っちゃった。

会計を済まして紙袋を受けとるとニコッと微笑んで歩き出す。

買った後もあのスパイクの良さを私に説明してくれるけど私は上の空。

『この土踏まずのカーブがすげぇ大切で 走ったときに全然違うんだよ。』

『…ハイハイ…』

だって 久しぶりの日本のショッピングモール。

お店も充実してアメリカだとなかなかサイズを見つけられない私にはどのお店も入ってみたいのに

『だから 踏み込んだときに…なぁ 聞いてる?』

そんな私の目線を気づいてなんくれるわけもなく…

『…聞いてますぅ…』

話し続ける京介さんに視線を向けると その先の看板に目が止まった。

『…あっ…ここ…』

『…どした?…』

『ここのお店』

『あ~。』

『このネックレスの…』

ネックレスのトッブにこのお店のロゴが刻んであった。

『ちょっと見てもいいですか?』

『いいよ。』

店内にはキラキラと輝くジュエリー。ここのお店はかわいいデザインなのに少しクールで場所を選ばずにつけられる。

『いらっしゃいませ。気に入ったものを出しますからお気軽にどうぞ』

カウンターの向かいから店員さんが笑顔で話しかけてきた。

『璃子 欲しいのある?』

ハイネックの首もとからトップを少し覗かせて

『ないない。私にはこれがあるから。』

『お客様のそのネックレスとお揃いの物がこちらにありますよ』

店員さんがそう言って出してくれたのはオープンハートのピンクゴールドの指輪だった。

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