あなたの色に染められて
第27章 お気に入りの場所
『京介…璃子ちゃん!!』
京介さんの背中からひょっこり顔を出すと 夏樹さんは立ち上がり 目を丸くして私たちのもとに歩んできた。
『ご無沙汰してます…夏樹さん』
『二人はやっぱり繋がってたんだな』
夏樹さんは小指を立てて微笑んだ。
テーブルにつき 簡単に寄りを戻したことを報告すると 夏樹さんは目の横に皺を寄せて
『いや~。でも本当によかったよ。あの日の京介の涙が頭から離れなくってな』
『…涙?』
『そう…記憶を戻したあとに璃子ちゃんの名前を何度も呼びながらな』
『夏樹さん 勘弁してよ』
記憶を戻したのがこのお店だったとは聞いたけど 涙まで流してくれたなんて…
『ゆっくりしてって。俺はあっちから京介のニヤケ面見てるから』
そう言ってオーダーを取りに来た店員さんと入れ替わった。
このお店ではいつも京介さんがリードしてくれる。だから 私はそのテキパキと注文する姿にいつも見惚れてしまう。
メニューをパタンと閉じて優しく微笑むと 夏樹さんからプレゼントされたスパークリングワインを手に取る。
シュポン!とらしい音をあげて私のグラスに注いでくれる彼の姿はまたステキで
グラスを持って『乾杯』なんて微笑まれればまだ口もつけてないのにもう私の頬は桜色だと思う。
『なぁ 璃子。さっきのリングつけてやるよ。』
バックからペアのリングを取り出して京介さんに渡し リングを取り出すと私は右手を差し出した。
『…どの指?』
『知らないの?』
『指輪なんて買ったことねぇもん。』
『女の子に?』
『あぁ。だからどれだよ。』
私は薬指を少しだけ動かして京介さんの顔を見た。
指先に手を添えられて リングゆっくりと付け根へと進めていく。
『…また泣く…』
テーブルクロスに涙が零れる。
『…へへっ…だってうれしいんですもん。』
長い腕を伸ばして私の頬の雫を指で拭ってくれる。
『じゃあ 私も。』
少し太いチェーンに指輪を通して イスから立ち上がり 京介さんの背面へ回る。
お互いが心の支えになるようにとプレゼントしあった指輪。
『…すげぇドキドキするな…』
チェーンを首に添えて金具を止めて 肩をポンと叩くと
『…なんかくすぐってぇな…おかしくねぇ?』
顎をあげて リングに指を添えて照れ笑いをする京介さんが堪らなく愛しかった。