あなたの色に染められて
第27章 お気に入りの場所
『俺にもよく見せて』
私の手を握りリングに指を添えてクルクルと回して
『キラキラだな。』
『…うふふ…キラキラって…』
『…うるさい』
さっき言っていた言葉を思い出した。
『ねぇ。女の子に指輪あげたことないの?』
『…ない…』
遥香さんと6年も付き合ってたのに…指輪のひとつもプレゼントしてないなんて
『俺ね ネックレスもおまえが初めてだから。』
『…ホントに?…』
『こういうのって 簡単にプレゼントするものじゃないと思ってたから。』
私のリングに指を添えて優しく微笑むと
『肌に直接触れるものだからさ。気持ちが籠るっていうか…特別っていうか…』
『…そうですね 身に付けると少し御守りな感じがあるかも。』
『…御守りか…なるほどな。』
京介さんはフッと微笑みグラスに視線を落とすと
『昔さ長谷川さんに幸乃さんの誕生日プレゼント買うの付き合わされたことあって… 俺にはどれも同じに見えるのに幸乃さんのこと想いながら選んでんの見てさ』
『長谷川さんらしいね。』
『…だろ。指輪だったかな。露店で売ってるようなやつなんだけど…それ見ててさ 指輪とかネックレスとかって惚れた女にあげるもんなんだって思ったんだよ。』
…なんか嬉しいな…私二つも持ってる…
『…御守りか…璃子がアメリカ行ったらこれは俺の御守りになるんだな。』
胸のリングをそっと撫でて京介さんは少し寂しそうに笑った。
料理が運ばれてくると 京介さんがフォークとスプーンで上手にサーブしてくれる。
『う~ん!やっぱり美味しい!』
『お前ってホント…』
『…ん?…』
『よく食うなぁって…』
こうして顔を見ながら食事をするもあと少し。そばにいる時間が長くなるほど 寂しさが込み上げてくる。
『京介さん。明日お仕事いってる間 お部屋に居ても良いですか?』
『…いいよ…ゆっくりしてな』
『夜ごはん…作っても良いですか?』
『…ありがとう。少し遅くなるけど頑張るから…』
だんだん欲深くなっていく。会いたいって感情が今はもう離れたくないって。
明日のことを考えると胸が苦しくなる。
薬指のリングを親指で確かめる。
きっとこの仕草が私の癖になる。