あなたの色に染められて
第27章 お気に入りの場所
『そっか…それはキツいな…』
璃子が電話で席を外した時にやっと俺の胸の内を夏樹さんに話せた。
『惚れた弱味ですから…』
『京介にそんな台詞を吐かせる璃子ちゃんは大した子だよ。』
俺のリングをチョンと触って 意味深に微笑む夏樹さん。
『…あの子の前では格好つけてろよ…笑顔で送り出してやれ。』
俺の肩を叩く夏樹さんは 俺たちの弱さを知っている。
着信を確認して俺に遠慮しながら電話に出た璃子
店の外で先生からの電話を受けてる璃子は 店の中の俺をチラチラと気にしてる。
俺は上手に笑えているだろうか…
もう仕事のパートナーとしての付き合いだと璃子は言うけど 同じ屋根の下 一度は愛を語り合った二人
璃子のことを信じてはいるけど やっと再会して心を通わせてまだ俺たち一週間。
不安がない方が嘘になる。
カランカラン
『さむ~い!』
腕をさすりながら席につく璃子の頬は寒さで赤く染まり
『やっぱりコート着て出ればよかったぁ』
『だから言ったろ……うわっ!冷てぇ』
俺の手に冷たくなった手を重ねてイタズラに微笑む。
『…暖かい…』
『…だろ…』
冷たくなった手を両手で包み指先にそっと唇を落とすと今度はピンク色に頬を染める。
『おじさんの前でイチャイチャすんな。』
『あっ!アフォガード!』
夏樹さんが璃子の前にそっと置く。
『その笑顔が見れて本当に良かったよ。また帰ってきたときには顔見せて』
『はい…このアフォガード食べに帰ってきますから』
『嬉しいこと言うね。』
スプーンでそっと掬って可愛い口に運べば
『う~んっ!美味しっ!』
本当に見てて飽きないこいつ。
『京介さんも…あ~ん』
『…あ~ん…って。』
首を傾げてスプーンを差しだし
『もう こぼれちゃうから…あ~ん…』
『……。』
『ね!美味しいでしょ?』
カウンターに座る夏樹さんが俺を見て笑ってる。
「あ~ん」なんて俺らしくないだろ。
『うん。璃子の味だ』
『…私の?』
『そうだよ。璃子はなんの味なんだっけ?』
一口掬って舌で溶かして その甘い声にのせて
『うふっ…京介さんの味です。』
『ふ~ん。俺はこんな味なんだ』
『ふ~ん。私もこんな味なんですね』
俺は一生 璃子に溺れていくんだろうな
『はい もう一口…あ~ん…』
『…あ~ん』