
あなたの色に染められて
第28章 離れていても
『…ん~ぅ…やっぱ俺 日本人だわ』
『…たっちゃん大袈裟…』
特別な関係を解消したときに 家事全般をメイドさんに頼む ということなった私たち
何でも完璧にこなしてくれ テキパキと働いてくれるメイドさんに満足してたけど
手術などでヘトヘトになって帰ってきた日でもハイカロリーでヘビーな料理が食卓を彩られていたのには困惑した。
『…見てるだけで胃が…』
『…さすがにね…』
眉間にシワを寄せテーブルの前から動けない私たち。
『ねぇ たっちゃん…おうどん作ろっか?』
常備しておいた乾麺を茹で卵を落としただけの月見うどんなのに
『…生き返る…』
たっちゃんは熱い丼を手に持ち 勢いよくうどんを吸い上げる
『明日から夕食作るよ。』
『…イヤ…それは…』
柄にもない…遠慮なんかしちゃって…
『じゃあまた あのヘビーなの毎日食べるの?』
『…無理…』
本当は二つ返事なくせに 私たちの関係にキチンと線を引く彼。
普段は出逢った頃のように上から目線でズバズバとモノを言って私を困らせてるのに
丼を下ろし 箸を真っ直ぐに突いてチラチラと私を見ながら
『…だって…彼氏に…』
すごくオレ様なくせに律儀で人の目線に立てる人。
京介さんと寄りを戻したと話したら 昔のように優しく微笑んでくれたっけ
だから 私にも少しお礼をさせてよ。
『家賃も食費も出してもらってるんだから このぐらいは…ねっ…』
『…いいの?…』
『…いいですよ…』
『…じゃあ…お言葉に甘えて…』
もう ああいう関係に戻ることはない。恋愛関係じゃなくて 一緒に働く頼れる上司?…ううん 理解者かな…
『明日 お買い物連れてってよ』
『…あぁ…』
『サラにオーガニックのスーパー教えてもらってたの。』
『オーガニックね…女ってその単語好きだよな』
『なんかその言い方ムカつくんですけど』
やっぱり私たちはこの関係の方が合ってるのかもしれない。
お互いにモノを言える関係。仕事としてのパートナー。
『じゃあ…作ってあげない』
『なら…連れてってやんない』
日本に帰れるまであとどのぐらいなんだろう。
食器を片付けながら窓の外を見る。
空には満点の星空。
明日は電話で話せるかな…
繋がる夜空に想いを寄せた。
