
あなたの色に染められて
第28章 離れていても
『…明日 日勤だから…』
『…いいじゃん…送ってくよ…』
『…でも…』
直也が美紀ちゃんの耳元に顔を近づけ 一言二言呟くと
『…じゃ…行く…』
頬を染めて直也に折れた。
いつもは美紀ちゃんがガッチリ主導権を握ってるけど 二人でいると直也の方が何気なくリードしてる。
『美紀~。姉さん呼んでるよ~』
『は~い! 今戻りますから』
魔女たちに呼ばれ 直也にニコリと微笑んで席を立った
その向けられた笑顔に直也も心なしか頬が緩む。
『相変わらず仲いいな』
『…そうっすか?…』
首を触りながら 一丁前に照れるコイツ。
明日仕事な美紀ちゃんを “俺んちに泊まれ”なんて誘ってるくせに
『…そうっすか?…じゃねぇよ…直也の分際で生意気だ』
『佑樹さんは彼女作らないだけでしょ?』
佑樹は彼女を欲しがる割りに一夜限りの女を求めるタイプ。
『…なかなか上手くいかないんだよ…』
『…へぇ…』
意味深な顔を佑樹に向ける直也。いつものように 二人のくだらない話になりかけてた。
『…璃子ちゃんみたいな娘が希望なんだけど…』
『…は?璃子…』
璃子の名前が出てくるまでは
『…そう璃子ちゃん。…いつも笑顔で…俺が守ってやる!みたいなさ…それに…オッパイ大きいし…』
最後のは余計だろ…
でも 酒のせいか今日の佑樹は少し違ってて
『京介が狙ってんのわかってても …モノにしたかった。』
佑樹が 随分と強引に誘ってたことを思い出した。
『この間璃子ちゃんの笑顔見て…やっと諦めた…それまで俺 本気で片想いだったんだから』
『…マジですか?…』
『あのぉ…京介先輩の彼女ってそんなにいい人なんですか?』
…あ…一匹狼…
俺たちのテーブルのお誕生日席 まぁ俺の隣なんだけど…いつの間にか頬杖をついて座っていた萌。
『…会ったことなかったっけ…』
『…見たことはあります…スタンド席で先輩とイチャイチャしてたのを…』
…イチャイチャって
棘のある萌の言葉。
“期待させんなよ”
佑樹にそういわれたな。
『萌ちゃんは璃子ちゃんを知らないからだよ』
直也が優しく答えたけど
『…じゃあ…教えてください。どんなにいい女性なのか』
…一匹狼は気が強くないとやっていけないか
