あなたの色に染められて
第29章 HAPPY BIRTHDAY!
『そのスカート可愛いね。あっちじゃ そういうの売ってないの。』
璃子さんに負けまいと昨日から何着も洋服を引っ張り出し
いつもは持ってこないメイク道具まで球場に持ってきたぐらい気張ってここに座ったのに
『…ねぇ京介さん…お買い物少しできるかな?』
『お伴しますよ…チビッ子は大変ですからねぇ』
『…もう…』
後ろを振り返り 先輩を上目使いで睨んでも 私から見てもそれは逆効果で
『…仲…いいんですね…』
『…そう?…すぐチビチビって言うんだよ…』
クスリと微笑みながら 璃子さんは長い髪を耳にかけた。
…あっ…それ…
ニットに隠れていて気付かなかった。右手の薬指に輝くリング。
…お揃いだったんだ…
先輩の首にも同じようなデザインのリングが揺れていた。
『璃子~!いつまでそっちにいんのよ!』
大奥から呼び戻されると 先輩は璃子さんの脇の下に両手入れて
『…ほらよっ…』
小さな体をスクッと立ち上がらせて
『はーい!すぐに行きまーす!』
私たちに舌をペロッと出して小さく手を振り大奥に戻っていった。
『…チビなくせに…』
その後ろ姿を笑顔のまま見つめる先輩
『…相変わらずだな…あの笑顔…』
長谷川先輩たちも目を細めて後ろ姿を見送った。
『まだ先生と住んでんの?』
『美紀から聞いたけど たまに飯なんかも作ってるんですよね?』
『そうだよなぁ…ひとつ屋根の下だもんなぁ』
…先生?……飯?……ひとつ屋根の下?…
知らないワードがたくさん出てきてみんなの顔を順に見ていくと
『…いいんだよ…俺が納得してんだから』
私の方をチラッと目線を向けて
…そっか…私の前だから話を切ったんだ
それに何となくみんなが気づくと 直也さんが話題を変えた。
『それより誕生日どうするんですか?』
『璃子がなんだか 色々と考えてくれてるみたいで』
…誕生日?…
『明後日かぁ…どっか行くの?』
『知らね…教えてくんないの。しおり作って当日渡すって』
『…しおりって…アハハ…』
『璃子ちゃんらしいな…プッ…』
…私も何か出来ないかな…
これだけ見せつけられてるのに まだ足掻いてる私
お休みの度に側いるのは私なんだから…
私にしか選べない何か…遠く離れた彼女じゃ選べない何か
私の頭のなかはプレゼントのことでいっぱいだった。