あなたの色に染められて
第29章 HAPPY BIRTHDAY!
『キャー!京介先輩!!』
『さすが先輩!かっこいいよねぇ!!』
京介さんが左中間の深いところにヒットを打ちランナーを2人返すとスタンド席の最前列を陣取ったマネージャー達がメガホンを片手に黄色い声をあげた
余裕で辿り着いた2塁ベースから璃子に向かってガッツポーズをしてくれたと思ったんだけど…
璃子が笑顔で手をあげかけると
…あっ…
あの黄色い声援なわけで…
『なんか パワーアップしてない?』
『…イヤな感じ…』
『まあまあ…』
『私だって…応援したいのに…』
足をブラブラとさせながら唇を尖らせて
『あ~ぁ つまんないの…』
『ほら ブー垂れんな。そんな顔してるピチピチの女子大学生にとられちゃうよぉ』
モテる彼氏を持つと 大変なわけで…
『…私の京介さんなのに…』
でも それがなんだか可愛くって
成長したね…うん。成長した…
この球場にはじめて来たころの璃子はまだ男の人とろくに言葉も交わせない乙女で…誰が想像しただろう。
『気にしないの。彼女はデーンと構えてないと!』
『…わかってますぅ…』
*****
『おまえ さっきから俺のこと避けてない?』
『…別に…』
『おい!ちょっと待てって』
『……。』
試合が終わりシャワーを浴びた京介さんがベンチに迎えに来ると璃子はまだ臍を曲げていて
さっきから京介さんが来るとプイッと何処かに歩き出す。
『璃子…いい加減にしなさい。京介さん困ってるでしょ?』
『……。』
『俺なんかした?』
璃子の手を掴み私と交互に見ながら状況が把握できていない京介さん
私がマネージャー軍団を指差すとクスリと微笑んで さっきまで被っていた帽子を璃子に被せると
『帰るぞ…美紀ちゃん悪いね…』
掴んだ右手を外しスッと指を絡めて 璃子の荷物も奪い取って歩き出した。
…京介さんらしいな…
歩き始めた方向は駐車場に行くには遠回りな マネージャー達が集まっている出口で
『…え…先輩の彼女さんですか?…』
『そう…俺の大事な彼女さん』
ここまで聞こえるぐらい大きな声で言っちゃって
ほらね あんなに口を尖らせてたのに もう歯なんか見せちゃって
『…単純なんだから…』
さぁてと 私も今日は直也に甘えちゃおうかな。
あの二人に負けてられないんだから…