あなたの色に染められて
第29章 HAPPY BIRTHDAY!
『はい どうぞ』
『…本当に作ったのかよ』
夕食の片付けを終えた璃子がソファーに座る俺の正面に立ち 両手で“しおり”を差し出した
『また随分と派手だな』
そのしおりは表紙も中も璃子が書いたと思われるカラフルなイラストがサインペンで彩られていて
『いいからいいから』
その手作り感が飾らない璃子らしくて
『どれどれ』
俺の膝に引き寄せて座らせ 二人でしおりを覗き込む
球場でヤキモチなんて焼いてくれてご機嫌ナナメだったくせに 今 頬を寄せるコイツは満面の笑みで
『…なんかドキドキする…』
なんて言いながら胸に手を当てて俺の反応をまつ
『マジ?…東京ドームって』
『えへへ』
『巨人戦?』
ニッコリと微笑む璃子はチケットを2枚ポケットから出して
『じゃーん!』
『うそ!…すげぇ嬉しい!野球見に行くのすげぇ久しぶりなんだけど!』
ゴールデンウィーク中だからチケット獲るにも大変だっただろうに
『ヤバイ!マジで嬉しいんだけど…』
『ちょっと 苦しいよ!』
後ろから頬を擦りよせ抱きしめちゃうぐらい俺もはしゃいじゃって
『それで終わりじゃないの。続きを見てください』
『俺 璃子と野球見れれば他いらないよ』
別に誕生日なんて浮かれる年齢でもねぇし
ただ 急なピンチヒッターで日本に戻ってきた璃子と過ごせたら それだけでいいって
『せっかく計画したんだから見てください』
閉じたしおりを璃子は開いて催促する
『…デーゲームだから夜飯かぁ…』
『そうなの。どっかにディナーに行くか…お家でのんびりするか選んでほしいの』
…選択制ですか
『璃子はどうしたいの?…っていうか飯作るの面倒だろ…』
『面倒なんて…私はね出来れば作ってあげたいの。京介さんの大好きなものいっぱい 。でもさそれって特別感がないっていうか…いつも通りっていうか… だから…』
『…じゃあ…おまえの手料理がいい。…俺の一番のご馳走だからな…』
『ホントに?』
髪にキスを落として
『ホント』
笑顔の花が咲いて
『じゃあなに食べたい?…唐揚げ?パスタ?ハンバーグ?』
俺たちは本当に家が好きで…あのときのクリスマスだってこいつの手料理でグラスを重ねて
『なんでもいいよ。デザートが璃子なら』
『また…すぐにそうやって!』
明日の計画を立て始めた