あなたの色に染められて
第29章 HAPPY BIRTHDAY!
『…ふ~。いいお湯でした』
お風呂上がり いつものようにドライヤーを持ってリビングに入ると
細い黒縁の眼鏡をかけた京介さんに一瞬で目を奪われた
…うわっ…かっこいい…
デスクトップに向けるレンズ越しのまっすぐな視線は滅多にお目にかかれない仕事モードの彼で
その視線を私に向けられれば 私のハートはドクンと鳴り響き
…射ぬかれた…
たぶんその言葉がぴったりと合うんじゃないかってぐらい ドキンと心が音を立て
部屋の真ん中で 顔を赤く染めて動けない私って 本当にこんな素敵な人の彼女なの?って 変なことまで考え始めちゃって
『…璃子…どうした?』
京介さんに名前を呼ばれて ハッと現実の世界に戻されても
『…いや…そのぉ…あっ…お水お水…』
なんだかドキドキしちゃって 冷蔵庫の中のミネラルウォーターを後ろ向きで一口飲んで
『…ふぅ…』
なんとか心を落ち着かせて蓋を閉めて
『… 乾かしてやるからおいで…』
『…はい!…』
変に大きい声で返事なんかしちゃって
『…はいここ…』
俯きいつものようにソファーの下に腰を下ろした私の顔が赤いのがバレませんようにって
目を瞑り 京介さんの指先を感じる。
…長い指に広い掌…
なんでだろう…はじめて手を繋いだあの日を想い出した。
あの日から私はこの大きな手からたくさんの愛をもらっている。
途中 記憶喪失という二人の試練はあったけれども あの時だってこの手は私に幸せを与え続けてくれた。
握りしめていなければいけなかったのに 自分の弱さで手放し後悔して
でもまた私の手を強く握りしめてくれた京介さん。
『はい おしまい…よいしょっと…』
いつものように膝の上に抱き上げられ ギュッと後ろから抱きしめてくれる。
合わせた頬に眼鏡のフレームが当たり京介さんは眼鏡を外してテーブルにのせて 髪にキスを落としてくれる。
『…あと少しでお誕生日だね…』
『…あと30分か…』
私の頭に顎をのせて腕の中の私の体をゆっくりと揺らして
『…このまま0時をむかえようか…』
『…うん…』
指を絡ませ 頭に頬に耳朶にキスを落として 私たちは微笑みあい0時の瞬間を待った
『5.4.3.2.1…』
…チュッ…
『…おめでとう…京介さん…』
『…おまえなぁ…』
私から最初のプレゼントになったかな…