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あなたの色に染められて

第29章 HAPPY BIRTHDAY!



…すごい人…

回転扉を抜けたドームの中は私たちと同じように 応援グッズに身を包んだ人たちで溢れていて

『…うわっ…』

『ほら 余所見すんなって。』

繋いだ手をギュット握り返すと

『…手 離すなよ…』

『…はい…』

いつだって私をリードしてくれる。


フードコートを抜け 立ち見の観客の脇を通り 一塁側のスタンドに降りていく。

『…A-16の…ウソ…すげぇいい席じゃん…』

『…でしょ…』

ベンチの真上の選手がよく見える座席…運良くキャンセルを見つけてゲットした。

『こんないい席で見んの初めてだよ。』

京介さんはベンチを出入りする選手を食い入るように眺めて

『あっ。6番の人!…ほらほら。』

『ハイハイ…璃子のお気に入りの選手ね』

それぞれのお気に入りの選手のユニホームを羽織りオレンジ色のタオルを持った私たち

『お姉さ~ん!ビール2つ下さい。』

京介さんが売り子のお姉さんを呼び止めてお決まりのビールを注文して

『京介さん…お財布…』

『ハイハイ…じゃ遠慮なく…』


ランチのお店でもこのユニホームを買うときもそうだった。

「今日は私が払うの」

「…わかったよ…ありがとな…」

いつも私の分まで知らない間に支払ってくれていたから 今日は全部私がおもてなししたいなって


『…カンバイ…』

『おめでとう…京介さん…』

今日何度目かのお祝いの言葉を添えて 紙コップを合わせると

『…おっ…始まるぞ。』

グラウンドには今日のスターティングメンバーが一人づつ呼ばれ 守備に着いていく

『…ワクワクするね…』

プレゼントした私の方が興奮しちゃって オレンジ色のタオルを小さく振り回して

『…ホームラン見れるかなぁ』

『 まだホームラン見たことねぇの?』

『…だって…京介さんが打ってくれないんだもん…』

『…それはすいませんでした…現役の頃なら結構飛ばしてたんだけどなぁ…』

『…見たいなぁ…京介さんのホームラン…』

『そのうち打ってやるよ…待ってろ…』

京介さんの言葉と重なるようにワッと球場に拍手と歓声が響き渡る。

『三振…いいスタートだねぇ…』

…良かった…

早速引き込まれている彼の横顔を見ながらビールを一口飲む。

…ビール片手に野球観戦か…

…ウフフ…変なの…

私はだいぶ京介さんに染まってきたみたい

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