あなたの色に染められて
第29章 HAPPY BIRTHDAY!
『…いきますよ!…せーの!』
…フゥー
『おめでとうございます!』
…バチパチパチ…
『…ったく…来年はしねぇからな』
璃子の風呂上がり いつものように髪を乾かしてやったあと 手作りケーキにロウソクを灯し
せっかくだから…と電気まで消されてロウソクを吹き消した。
『いいじゃないですか…一年に一度なんですから』
カットすることもなくそのままフォークで掬い
『…ん…うまい…』
調理道具が乏しい俺の家だからってフライパンひとつで出来るミルクレープを作ってくれていて
『私も…あ~ん』
『…ほら…』
『私 天才かも』
自分で作ったのを自画自賛する可愛いヤツで
『…あっ…』
寝室からスリッパの音を響かせながら出てくると
『…はい…これ…』
綺麗にラッピングされた包みを俺に差し出して
『…ネクタイ?…ハハッ…俺好みだ。』
紺地にバットとボールが散りばめられたもので
『…京介さんらしいでしょ…一目惚れしちゃった。』
立ったままの璃子を俺の膝に引き寄せて お礼のキスを贈り抱きしめた。
『…ありがとな…璃子…』
『お誕生日おめでと…京介さん…』
璃子を胸に抱いたままぬくもりを感じた。
帰国が決まってからの短期間で計画してくれた俺の誕生日。
野球観戦も夜飯もケーキも プレゼントのネクタイも全部 俺のことを考えてくれていて
そのすべてが飾らない璃子らしくって そんな俺が璃子にお礼が出きるなら
『…あのさ…なんでも券なんだけど…』
『…うん…』
『…明日…使いたいんだ…』
『…明日?…』
それは俺と同じ不安を少しでも拭い去ることで
『…俺の実家に付いてきてほしいんだけど…』
『…え…』
『…璃子のこと紹介させてよ…親父とお袋に…』
俺は本気でお前のこと考えてるからって
『…話は少ししてあるんだ…大切な人ができたからって…』
『…。』
プロポーズではないけれど わかってくれるよな…俺の気持ち…
『…付いてきてくれる?…』
『…気に入ってもらえるかな…』
『…おまえなら喜んでくれると思うよ…ったく…すぐ泣く…』
涙を流しながら微笑む璃子の気持ちに俺はちゃんと寄り添えてるか?
『…私がプレゼントもらっちゃったみたい…』
戸惑うどころか喜んでくれるなんて…
俺の方が最高のプレゼントもらったよ。