あなたの色に染められて
第30章 大切な人
『こんな感じでどうですか?』
『いいわね。こっちもお願いできる?』
『はい!』
『璃子ちゃんはお料理やってるのね。私なんか全然でお義母さんを困らせましたよね。』
『…ウフフ。そうだったかしら?』
お兄さんの奥さんの香織さんも到着して女3人仲良くお昼御飯の用意をしていた。
座ってて…と気を使って頂いたけれども落ち着くわけもなく
「気になるなら行ってこい。」と京介さんに背中を押されてキッチンに向かった。
『ねぇ璃子ちゃん。京介くんにプロポーズされた?』
『プッ…プロポーズ?…あっ…いえ…全然そんな話は…』
『…まったく…ダメねぇ京介は…。男ならビシッと決めないとねぇ香織ちゃん!』
『私 璃子ちゃんが妹になったら嬉しいのになぁ。ねぇお義母さん!』
挨拶をさせてもらっただけで嬉しかったのに こんな言葉まで掛けてもらえるなんて。
『京介にガツンと言うから うちのお嫁さんになってね。』
『…ありがとうございます…』
こんな会話がキッチンで繰り広げられていたなんて…ウフフ…京介さんにはわからないだろうな…
『はい みなさ~んお料理できましたよぉ』
大きなテーブルいっぱいに並んだお母さまの手料理を囲みながら食事を楽しんでいると
『で、約束の5年だけどどうするんだ?』
『竜兄とも話してるんだけど 職場にはもう話はしてあるから7月の年度始めにはこっちに世話になるつもり。』
…世話になるって …今のところを辞めちゃうってこと?
私は京介さんの横顔を見つめて真意を探ると
『あぁ。悪い…話してなかったよな。』
箸を置き 私に体ごと向き直し まっすぐに私の目を見て
『兄貴が酒の味を受け継いだから 俺はここの経営に携わってサポートできたらって。』
『そう。だから京介には就職して世間勉強してもらってたわけ。二人でこの酒蔵をもっと盛り上げていくためにね…昔から決めてたんだよ。』
『…素敵ですね。代々受け継がれたものをお二人で継承していくなんて…』
信用金庫に勤めた理由もきっとそうなんだ。地元の人のための信用金庫だからって 前に話をしてたもんね。
『京介が発案した蕎麦屋もそろそろ形になりそうだし お前が動き始めればまた前に進めるな。』
この酒蔵の将来を話している京介さんはとっても頼もしくって
私もそのお手伝いができるといいな。