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あなたの色に染められて

第30章 大切な人



『お夕飯まで食べていけばいいのに…』

『ダメ。俺が酒呑みたくなっちゃうから。』

兄貴と並んで走った土手に目をやりながら茜色に染まり始めた山々に目をやった。

『じゃ お土産に何本か持っていきなさい。それと璃子さんのお宅にも。』

『じゃ 売店寄ってくか。』

『色々とお心遣いありがとうございます。』

『また遊びに来てね。京介抜きでもいいから!』

『ウフフ…そうですね!…あっ香織さん。もう一度お腹触ってもいいですか?』

すっかり打ち解けて俺のことなんて全く眼中にないお袋たち。

俺はその光景を横目で見ながら売店の中へ入っていった。

『こんちわ…』

****

『What do you recommend?』

『え?レコメン?』

『Aa~. What do you recommend?』

『あ~スローリープリーズ?』

お手上げ状態の売店のおばちゃんが俺に助けを求めるように視線を送るけど

…ムリムリ…

俺は視線をそらせて お菓子コーナーに足を向けると 救世主は登場するもんで…

『What´s the matter with you?』

『Oh!What do you recommend?』

『京介さんオススメノお酒ってどれですか?』

『へっ?…あ~辛口?甘口?』

たぶん話せる人からすると何でもない英文なんだと思う。

『辛口ですって。』

『Could you gift-wrap this for me?』

『ラッピングって出来るんですか?』

『あぁ。化粧箱に入れる?』

売店のおばちゃんが箱を指差してうんうんと大きく頷いて


『…すげぇ。璃子ちゃん居てくれたら外人さん向けの酒蔵見学だって夢じゃねぇな。』

『これからは世界にも目を向けていかないとね!お父さん!』

****

手に紙袋を何枚もぶら下げて笑顔で店を後にする外人さんに俺たちも頭を下げて

『ありがとうございました!』

俺たち なんか凄いもの見た感じで。

『璃子ちゃんかっこいい~!』

『あっ…いや…出すぎたマネを…すみませんでした…』

璃子がこっちに帰ってきても英語を活かせる場所って身近にあんじゃねぇかって。

『璃子ちゃん。アメリカから帰ってきたら家にお手伝いに来てね。』

『はい!』

笑顔で返事をする璃子を見て 俺は覚悟のようなものを胸に刻んだ。

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