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あなたの色に染められて

第30章 大切な人



…なんだろ。

目を閉じて空を見上げ 京介さんの言葉を聴き逃さないように耳を傾けていただけなのに どうしてこんなにモヤモヤとした気持ちになるんだろ。

京介さんはさっきからキスをしたことをグチグチと弁明しちゃって。

いつも私のこと俺のもんだ!って言うならもっとさ…男らしくさ…ストレートにさ…

目を開けたら泣きそうな顔した京介さんがそこにいて。

その顔見たら私の心の中で何かがプチっと切れて…

はじめてだからわからない感情だけど 気づいたら京介さんにこの心のモヤモヤをぶつけていた。

『別れたいって…おまえはもう要らない って私に言わなくていいんですか?』

たぶん私は今 泣きながら微笑んでる。感情が入り交じってる。

京介さんは大きく溜め息をつくと

『…俺が璃子と別れたいって言ったことあったっけ?』

『いいえ。』

『いらないって言ったことあったっけ?』

『ありません。』

私のこの心のモヤモヤはきっとはじめて京介さんに抱いた感情で

『…別れるとか俺が言うわけねぇだろ…』

俯いて髪を掻き上げ 小さく溜め息をつく京介さんを目にしたら やっとこの感情がなんなのか解った。

『…ムカつく…』

『…は?』

『ムカつきます。京介さん。』

『…璃子?』

言っちゃった。

もう一度 目を瞑り胸の前で腕を組み 少し足を開いてゆっくり目を開ける。

向こうに生活する為に2つだけ変えたことがある。

一つは 学生に間違えらないようにパーマをかけたこと。

そしてもう一つは 黙ってたら何も伝わらないから 自分の意見はハッキリ言うようになったこと。

…よし…

『さっきからなんですか?…ちょっとキスしたぐらいでグチグチと…』

『…へっ?…』

目を丸くして。呆気にとられてるって言うのかな。口をパクパクした感じ。

『…あのくらいじゃ…キスぐらいじゃ 私は別れませんよ。…って言うか 京介さんが別れたいって頭下げたって別れませんから。』

止まらなかった。口からポンポンと言葉が出てくる。

『…酒蔵手伝うんですから。…お義母さまにだって言っちゃうんですから…京介さんがグチグチ言って大変ですって!』

泣き叫んでる私ってスゴい不細工だろうな。だって 京介さん口開けて一言も喋らない。

…ナメんなよ!あのぐらいじゃ私の気持ちは変わらないんだから…

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