あなたの色に染められて
第32章 幸せのおすそわけ
「共犯者のくせに…。」
『アハハ。人を犯罪者みたいに言うなよ。』
「…意地悪。」
ちょうど時計の針が昼を指した頃 震えるスマホを手に取れば第一声から俺にブーブー文句を言う璃子。
きっと口を尖らせてへそを曲げて…。安易に想像がつくコイツがすげぇ愛しい。
『で 帰れるんだろ?』
「…結婚式には行きますけど。」
『…俺には逢わないの?』
「…どうしよっかなぁ…誰かさんが意地悪するからなぁ…」
きっと 楽しみにしてるのはコイツだって同じ。だってさっきから声に音符が走ってる。
『はいはい…。で…いつ?迎えに行くからちゃんと教えて。』
「…え?…来てくれるの?」
前の職場より 少し融通がきくんだからそれぐらいはやらせてよ。
『もちろん。大切な彼女が帰ってくるんですから。』
「…ホントに?…やったぁ!」
コイツは…単純って言うか素直って言うか…。
『フフっ… だから早く教えろって。』
「あのね。頑張って仕事終わりで飛行機に飛び乗るから… 20日の夜遅く?」
『いいねぇ…今年は21日に球納めだから出れんじゃん。』
「ホントに?それなら時差もあるからなぁ…もう一日早く着けるように先生にダメ元で頼んでみようかなぁ。」
…先生にね…。
俺がそのキーワード苦手だってわかってる?
『でさ…いつまで?』
「あぁ…26日の最終便には乗らないと…。ゴメンね。」
たった一週間か…。
毎度のことながら心で想っても口にはできないこの寂しさ。だから俺は話を変えて
『そういやぁさ…長谷川さん一家と佑樹と俺たちで結婚式の日に近くのコテージでも借りてみんなで一泊しようかって。もう勝手に予約とっちゃってるんだけど。どう?』
「いいですね!午後からのお式だし…帰るのも大変そうですもんね。」
『でさ… 次の日なんだけど…。』
俺が勝手に立てた予定。
『イヴだし…二人でどこかに一泊しようかなって。』
いつかの約束。俺は覚えてたよって。
「…え…お仕事は?」
『大丈夫。それまで必死に働くから…。』
ずっと過ごせなかったクリスマス。はじめてだからおまえにとびきりを用意してやりたくて
「…ホントに?」
『ホント。』
「…ありがとう…京介さん。」
璃子の喜ぶ顔が目に浮かぶ。
『泣くなバカ!』
「…だって…。」
…待ち遠しいったらなかった。