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あなたの色に染められて

第32章 幸せのおすそわけ


『…よいっしょ。重たっ…。』

ターンテーブルから重いスーツケースを取り上げ目指すは京介さんが待ってくれているゲートの向こう。

『…えっと…出口出口…。』

はじめて一人で乗った飛行機。いつもたっちゃんに任せっきりだったことを反省しながら 案内表示を頼りになんとかここまでたどり着いた。

『…ウフフ…。』

…やっと逢えるんだ…。

自然と緩んでしまう頬を隠すように手を当てて 到着ロビーをぐるりと見渡してしてみる。

『…あれ?…いない?』

迎えに来てくれるはずの京介さんの姿が見当たらない。先生に頼み込んでもう一日休みをもらってせっかく早く来たのに。

『…え~間違えちゃったかなぁ。』

大きなスーツケースを引きながら大きな案内板の前にいる私。

『…そうだよね…やっぱり ここでいいんだよね…。』

待ち合わせた場所を目で追って。一人じゃ何も出来ない私…情けないったらありゃしない。

『…え~どこぉ?…』

困り果てる私の背後に優しい微笑みを浮かべる彼が立ってたなんて。


*****


『…フッ…あのバカ…。』

到着ロビーに着く前 ゲートの向こうから頬を緩ませ歩いてくる璃子をすぐに見つけていた。

小さな体で大きなスーツケースを引きずりニヤニヤしながらゲートを抜ける。

ホントはすぐにでも駆け寄るつもりだった。でも初めて迎えに来た空港。いつもは先生と一緒だったからなんとなく遠慮してた。

だから 到着ロビーに笑顔で入ってきた璃子になんだか照れ臭くて少し離れたところで待つ。

でも璃子は俺を見つけられない。

…はぁ…なにやってんだよ…。

俺の前を困った顔して過ぎ去って 案内板を口を開けて眺める璃子。おまえどれだけここ利用してんだって突っ込んでやりたいほどで。

ゆっくりと璃子に歩み寄り 小さな頭に手を乗っけると 振り向くコイツは満面の笑みで

『俺の前を素通りすんなって。』

『…京介さん!』

『おっと…』

俺に勢いよく抱きつくコイツは表現力もだいぶ豊かになったようで

『ただいま…京介さん。』

『おかえり…迷子さん。』

久しぶりの甘い香りに心は踊る。

『…なぁ…ここでキスしていい?』

『…ここじゃ…んっ…。』

可愛い果実を頬張るのにおまえの返事なんていらないよ。

『…もう…バカ…。』

『うるせぇ。』

甘い甘い一週間が始まった。

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