あなたの色に染められて
第32章 幸せのおすそわけ
寝室のドアを開けると布団にくるまる女が一人。
ベッドサイドに腰を掛け 顔にかかった長い髪をそっと掻き分けながら
『…おい寝坊助…。』
『…んぅ…。』
重たそうな瞼を擦る仕草が堪らない。
『フっ…おはよ璃子。』
布団から顔だけ出して寝ぼけ眼で微笑んで
『…おはようございます…。』
昨晩の俺を困らせたときと180度違う顔。っていうか いつもの笑顔。
『…あれスーツ?…えっ?…今何時ですか?…』
『もう昼。コンビニで飯かってきたぞ。』
昼休みに抜けてきた俺。
『…ヤダ!ごめんなさい…あっ…キャッ!』
『バ~カ…これ着な。』
投げた俺のパーカーを布団のなかでモゾモゾと着ながら
『…私…昨日…あれ…?』
やっぱりだよ…。あんなに大胆振る舞ったのにきっとすべて忘れてるコイツ。
『美紀ちゃんに送って貰って 俺に担がれて。』
『…担がれて?…で…なんで裸?…って…京介さん?』
俺を100%疑ってる…そんな瞳で俺を見上げる。
『あのなぁ…勘違いすんなよ。襲われたのはオレ。』
『…へっ?…私?…そんなわけ…』
やっぱりな…
『…覚えてねぇんだ…』
ベッドの下に散らばる洋服にピンク色の下着たち。キャミソールは俺が止めたのに脱いだよな?
璃子の頬はみるみると赤く染まり出し
『…どうしても俺とエッチがしたかったんだよねぇ…?』
『…ウソぉ…』
赤く染まった頬を指の背で撫でながら この状況を楽しんだ。
だって 昨晩どんだけおまえに手こずったと思ってんだよ。
『証拠見せましょうか?…エッチな璃子ちゃん?』
『…証拠…?』
ネクタイに手を掛けYシャツのボタンを開けていくと 璃子の顔がさらに赤く染まった。
『さて いくつあるでしょうか?』
数えるのを躊躇うほどの小さなキスマークの痕 痕 痕…
『…私が?』
『覚えてねぇの?「メチャクチャにして~」なんて俺を誘ってたくせに…。』
枕に顔を埋めて足で布団をバタバタと叩きながら
『もぅ…どうしよう…!』
『璃子は今日から酒禁止な。』
背中からそっと抱きしめて 顔を俺の方に向けて
『今晩は…俺が襲っちゃおうかなぁ…。』
『あぁっ…もう忘れてください!…んぅ…。』
唇を重ねて昨晩の余韻を楽しんで
『…死んでも忘れねぇ…。』
どんなことがあってもおまえのことは忘れねぇから