あなたの色に染められて
第32章 幸せのおすそわけ
『璃子~!』
『わぁっ 久しぶり~!』
朝早く京介さんの車で出発して予定より少し早く着いた軽井沢の教会。
ロビーに京介さんと並んで入ると 先に到着していた高校の友人たちが私達のもとに集まってきてくれた。
久しぶりに顔を会わせる友人たちは相変わらず元気そうで
『璃子!噂の彼氏でしょ?ちゃんと私たちに紹介しなさいよ!』
挨拶もそこそこに私の腕をコツいて催促する。
『えっと…』
なんだか少し照れ臭い…。
私が京介さんの顔を見上げると微笑んで頷き
『はじめまして森田京介です。璃子の同級生なんだよね?』
『はい。私たち同級生なんです。』
『ちょっと…美紀から聞いてたけど本当に格好いい彼じゃない!』
『ホント…あんなに男子が苦手だったのにねぇ。』
みんなが勝手なことを言い始めると京介さんはクスクスと笑いだし
『今度ゆっくり その頃の話聞かせてよ。』
『はい!喜んでお話ししますから。』
『あぁもう!みんなうるさい!』
みんな私より一枚も二枚も上手。そう…高校の時もこんな感じだったな。
『じゃ 璃子。お友だちに迷惑掛けないようにな?』
『もう…京介さんまで!』
京介さんは私の頭をポンと叩いて空いているソファーへと歩きはじめた。
まだ長谷川さん家族と佑樹さんは到着していない様子。
今日は 私は美紀の友人として 京介さんは直也さんの友人として参列することになっていた。
『まったく璃子はなんだかんだ言ってイイ男捕まえるんだから。』
私たちも空いているソファーに腰を掛けコーヒーを注文して さっきの話の続きに花を咲かせる。
『ホントよね。酒蔵のお坊ちゃんなんでしょ?玉の輿じゃない!』
『…玉の輿?』
『まぁ いいわ。今日はゆっくり彼のこと聞かせてもらうから。』
『何を聞きたいのよぉ…』
ケラケラと笑いながら気も使わずに話せる友達。こんな生活を私は日本に帰ってきたときしか味わえない。
『だって 璃子の“ハジメテ”の人でしょ?』
『…えっ?!』
『私たちの“ハジメテ”の話は聞いてるのに璃子の話はねぇ…?』
顔を会わせれば制服を着て一つの机を囲んでいたあの日に一気に戻れる私たち。
『…え~!』
美紀の結婚式だってお構いなしの私達。
『さてどこから話してもらおうか?』
頬を真っ赤に染める私を京介さんは微笑みながら見ていた。