あなたの色に染められて
第32章 幸せのおすそわけ
パイプオルガンの音色に合わせて美紀がお父さんと腕を組んで私たちの前を歩いていく。
幼い頃 家族で軽井沢に遊びに来たときに目にしたここでの結婚式。
昔からある森の小さなこの教会で結婚式をするのが美紀の夢だった。
直也さんは悪阻で大変な美紀に代わって短期間でその思いを胸にこの日の準備に奔走したそうで
「いいダンナでしょ?」
なんて美紀は私たちに自慢げに控え室で話してくれたよね。
そんな美紀は今祭壇の前でお父さんから愛する直也さんに託される。
この光景を私たち同級生3人は涙を流しながら見守っていた。
厳かな雰囲気の中 神父さんに宣誓をして指輪の交換をして ベールを上げる。
美紀の涙を直也さんがそっと指で拭うと 幸せそうに二人は微笑みながら誓いの口づけを交わす。
『…愛されてるね…』
『…うん。美紀幸せそう…』
『…私も早く彼氏作んなきゃなぁ…』
教会の外でライスシャワーをするべく列席者が両サイドに並んで待っていると 京介さんと佑樹さんが私達の傍にやって来た。
『素敵なお式でしたね。綺麗だったなぁ。』
『直也の顔が凛々しかったもんな。…でもな…』
そっと屈み込んで手を握り私の耳元で
『…璃子の花嫁姿の方が綺麗だろうなって思ったけど…。』
『…もう…。』
きっと全身真っ赤に染まったであろう私と目を合わせて微笑み合えば
『ほらそこ…イチャイチャすんな。』
『…痛…。』
佑樹さんからコツかれる。
『あっ!出てきたよ!』
ライスシャワーの雨のなか 私たちの前を幸せ一杯に微笑んで直也さんと歩いていく。
『おめでとー!!』
『美紀ちゃん泣かすなよー!』
そして女子達の今後の運命をかけた争奪戦!
後ろを向いた美紀が元気一杯に声を張り上げて
『行くよー!せ~の!』
空に勢いよく放たれたブーケは綺麗に弧を描き たくさんの伸ばされた腕を通り過ぎ…
『…えっ…』
『…うそぉ…』
『ママー!ちー とれたよぉー!』
そう言えば 長谷川さん家のちーちゃんも立派なレディ。
『おいおい…頼むよ…まだ嫁に行くなんて考えたくないよ…』
長谷川さんはちーちゃんを抱き上げると
『ちーはパパのおよめしゃんになるんだもんねぇ?』
美紀たちの遠くない未来もこんな幸せな光景が広がるんだろうな。
…おめでとう…美紀…お幸せに…