あなたの色に染められて
第32章 幸せのおすそわけ
『璃子ちゃんの肌 白くて綺麗ねぇ。』
『そうですか?幸乃さんだってお肌ツルツルじゃないですかぁ。』
『いやいや…もう 二人も産むとボロボロで。』
コテージの敷地内にある大浴場に女3人で入りにきた。
『ちーちゃん 誰か来たら泳ぐの終わりよ。』
『はーい!』
運良く貸し切り状態の女湯。足を伸ばして今日の疲れを癒して。
『いいお式だったね。』
『…ホント…美紀は泣きっぱなしでしたもんね。』
披露宴でもお互い何度も見つめあって 微笑んで お祝いの言葉の頂く度に涙を流して。
…幸せ…って言葉を全身で表していた。
『…幸乃さんの結婚式はどんなでした?』
『お金がなかったから家族だけで式を上げて食事をしたの。2次会には友達たくさん来てくれたけどね。』
『家族だけで式かぁ…素敵ですね。』
『でもね…ウフフ…。式のとき…扉がバーンと開いて祭壇の方を見たらパパがもう泣いちゃっててさ。お父さんとクスクスと笑いながらバージンロード歩いたの。』
『あのクールな長谷川さんが?』
『可笑しいでしょ?…でもね…祭壇の前でパパに託されるときにね「俺のすべてをかけて守りますから。」ってお父さんに言ってくれて。あれは嬉しかったなぁ。』
幸乃さんは優しく微笑みながらちーちゃんを抱き寄せた。
『…璃子ちゃんはどうなの?…京介くんから何か言われてないの?その…プロポーズみたいなの。』
『…ありません…。』
考えてみれば「結婚」という文字が会話に出てきたこともなかったかもしれない。
『京介さんは「結婚 結婚」って言葉にするような人じゃないですから。』
幸乃さんは私の胸に一つだけ付いているキスマークを指でチョンとつついて
『こんなに独占してるのにね。』
『…あっ…イヤ…これは…そのぉ…。』
『…ウフフ いいじゃない?ちゃんと愛してもらってるって証でしょ?』
『りこちゃんあちゅいの?』
全身が真っ赤に染まるのはこのお湯のせいではなかったけど 幸乃さんはイタズラに微笑みながら
『このままじゃ璃子ちゃんがのぼせちゃうからそろそろでましょ。』
ちーちゃんを抱き上げて女子のお喋りタイムはここでお開き。
『ほら ちー!ちゃんと体拭かないと。』
…結婚かぁ…
『コラ!ちー!逃げないの!』
…私もいつかは京介さんとこんな風な幸せな家庭を築けたらいいな…