あなたの色に染められて
第33章 幸せのカタチ
濃紺地に桜の花びらが舞う浴衣に身を包んだ璃子は帯をほどくと俺に背を向けた。
恥ずかしがる璃子を脇目に俺は早々に脱衣所を後にする。
タオル一枚で体の正面を隠しながら入ってきた璃子は 俺に背中を向けて片膝をつき 掛け湯をする。
タオルで隠しても漏れる胸と腰…
…マジでエロい体…
頬を染めて片足ずつ湯船に浸かるとタオルを浴槽の縁に掛けて 俺に背を向けて離れて浸かった。
璃子は本当に恥ずかしがり屋さんで
『こっち来いよ。』
もう 俺ら何度肌を重ねたっけ?
璃子を抱き寄せて俺の足の間に身を沈め 胸に凭れかからせると耳までも紅く染まっているのがわかる。
目線を落とすと 無造作にクリップで留められ露になったうなじが艶やかで
…チュッ…
『…もう…』
上目使いで睨まれたって俺からすればそれも愛らしくて。
『やっぱ この時間で正解だったな。』
『本当…綺麗ですね。』
この貸し切り風呂の名前は「黄昏の湯」。冬に訪れたお陰で白樺の木々の間を縫って夕焼けを眺めることができた。
『この季節限定か。』
『春なら葉っぱで見えないですもんね。』
璃子はオレンジ色に染まった湯を掛けながら微笑んだ。
二人で見る夕陽はどのぐらいぶりだろう。いつの間にか二人の心の支えになった夕陽。
『…もっと傍に来いよ。』
『これ以上行けないですよ?』
『そうじゃなくて。…こう…。』
『…ヤッ!』
璃子の体を持ち上げ反転させて脚に跨がらせると 首筋に顔を埋めて抱き付きピッタリと体を合わせてくる。
華奢な背中に手を廻すとお湯越しでもわかる滑らかさと柔らかさ。
『…ったく…いい加減 慣れろよ。』
時に俺を焦らせるほど大胆になるくせに。
でも この恥じらいが俺の心を擽るのも事実なわけで。
『そんなにイヤなんだ。…なら…もう温泉なんか来れねぇよなぁ。』
『…ちが…違います。』
少し意地悪にそう言うとコイツは必死になって向き直る。
『…じゃあ…して?』
俺は唇を尖らせてキスをねだったりして。
『…。』
『あっ…そう。じゃ もう出ようぜ。』
苛めがいがあるっていうか なんというか…
戸惑う璃子を引き離し浴槽に手を掛けると俺の腕を掴んで
『…頑張る…。』
頑張り屋さんの俺の女。
『…フッ…頑張るんだ。』
頬を染める璃子が可愛くて仕方がなかった。