
あなたの色に染められて
第33章 幸せのカタチ
『…ったく…ほら…。』
『…冷たくて気持ちいい。』
あの後 京介さんにキスを頑張ると「ご褒美」と称された軽い苛めをうけた。
『変なところで頑張るから逆上せんだよ。』
『だって「お風呂でる!」って怒りだすから…。』
座椅子に凭れかかる京介さんに膝枕をしてもらいながら冷蔵庫のペットボトルで冷やしてもらっていた。
『ちょっと指挿れただけでそれだもんなぁ。』
『もう!言わなくてもいいですから!』
だいたい お風呂に一緒に入るってだけでドキドキするのに。
どこまで京介さんは上級者なんだろう…。
『ねぇ…京介さん…。今までの彼女さんと旅行したことあります?』
『そりゃ…まぁな。』
ここまでで止めとけばよかったのに 逆上せた私はつい余計なことを口にしてしまった。
『…遥香さんも?』
『遥香もだし…っていうか普通行くもんじゃねぇの?』
普通か…。
『…そっか…。』
こんないいお部屋に泊まって 一緒に温泉入って…。
歴代の彼女さんはああいう時に逆上せたりしなかったんだろうな…。
何となく 不安になった私は横を向いて 京介さんの腰に手を廻して抱きついた。
浴衣越しに京介さんの鍛えられた腹筋が私の頬に触れる。
私は何人目の彼女なんだろう。あれだけモテる人だから一人や二人ではないとは思ってたけど。
今更ながらにそんなことを考えてしまうのは逆上せたせいなのかな…
『また くだらねぇこと考えてんだろ。』
『…。』
『言っとくけど…女のために部屋取ったの初めてだぞ。』
『…え?』
髪を優しく撫でながら甘い声で心を溶かしてくれる。
『あのときダメにしちゃったから…。だからさ 温泉宿みたいな和室があって…部屋付きの露天風呂があって…でもイヴだろ?少しは洒落てねぇと格好つかねぇな…とかさ。必死で探したんだぞ。』
だから 和室…。ずっと気にかけてくれてたんだ。
『…ゴメンナサイ…。』
京介さんは優しく微笑んで
『…おいで。』
伸ばされた手を掴み起こされると 京介さんの脚の間に座らされ後ろからグッと抱きしめられた。
『俺だってあの先生に妬いてんだ。』
『…京介さんも?』
『…そうだ。だから 早く帰ってこい。俺を一人にすんな。』
今 彼の腕に抱かれて甘いキスをしているのは他でもない私。
あと少し…春になるまで…
…ね…京介さん…
