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あなたの色に染められて

第34章 キミを想う

『こんにちわ~。◯◯信金です。』

いつものように職員玄関を抜け事務所に入ると

『あれ?今日は主任お休みですか?』

この事務所の奥の席で ある意味ボス的存在の経理主任の机が綺麗に整頓されていた。

『今日は3階で新人さんの研修なの。…この小切手を預かってるんだけど…。』

『そうだ。今日から新人研修だって言ってましたね。』

そういえばうちの支店にも何人か配属されてたっけ。

『では預り証にサインと…昨日お預かりしてた通帳ですね。』

いつものように淡々と処理して 事務長に挨拶をして席を立ったときだった。

…コンコン…

『失礼します。事務長 新人の挨拶よろしいですか?』

新しい制服に身を包んだ新人さん達が経理主任と事務長室に挨拶に入ってきた。

『あっ…じゃあ 僕はこれで。』

鞄を手に取り席を外そうとしたときだった。

…ウソ…。

ドアの前にズラッと並んだ新人さんの中に

…マジ?…

俺が思ってたよりも小さくて あのときの写真よりも固い表情だったけど

それは間違いなくあの日 俺の心を鷲掴みにした

…リコちゃん。

が並んでいて。

『あっ。こちらね◯◯信用金庫の森田さん。事務所の皆さんはほぼ毎日かな…顔を会わせると思うから。』

すっかり退出のタイミングを逃した俺は紹介までされて

『は…はじめまして。いつもお世話になってます。◯◯信金の森田です。よろしくお願いします。』

なんて頭まで下げちゃって。

『やだ~信金さん。顔真っ紅にして。若い女の子前にして緊張してる?』

主任の言葉にリコちゃんはクスリと柔らかく微笑んで

…ヤバイ…あの笑顔ハンパねぇ…。

俺は柄にもなく作り笑顔なんかしちゃって

『では これから私たちは看護部長のところに行きますので…。』

『じゃあ 僕も…事務長失礼します…。』

逃げるように新人さんのあとから俺も部屋を出ていった。

営業車に乗り込むと俺はエンジンもかけずに目を閉じた。

この半年の間 俺の心の中でどんどん大きくなっていったリコちゃん。

全然 俺のタイプじゃないのに何故だか惹き付けられたあの笑顔。

~♪~♪

『もしもし…あぁ悪い…今日ちょっと無理になったわ。…つうか もう連絡してこないで。』

女の整理しなきゃな…。

自然とそう思った。

窓の外を見ると桜が満開で…綺麗だな…なんて初めて思った。

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