
あなたの色に染められて
第34章 キミを想う
『なんか俺 脱力感ハンパねぇんだけど。』
『あぁ わかる気がする。だって京介の一目惚れだろ?…うん…ありえねぇ。』
酒の力を借りて俺は知っている限りの情報を頭の引き出しから引っ張り出して それはそれは饒舌に語っていた。
『俺らてっきり直也のツレにいつものように手を出して その子が奇跡的にあんなにいい子だった…って思ってた。』
『ちょっと長谷川さん。その言い方酷くないすっか?』
ここまで言われてしまうほどあのときの京介さんからは想像も出来ない話だったのだ。
『でも あんなに遊んでたおまえがどうしてあの一瞬でそこまで一途になれんだよ。』
『そうだよ。この時は喋ったこともないんだろ?だだ見てるだけ~って感じで。』
そう。俺もそこは引っ掛かっていたところで
『確かに…。』
璃子ちゃんは誰が見たって魅力的でチャーミングで遊び人だった京介さんには縁がなかった可愛い女の子。
でもそんな彼女と絡んだこともないのにどうしてそこまで惚れ込んだのか…。
『俺も正直わかんねぇよ。』
京介さんは俯きながらポツリと呟くと優しく微笑みながら
『でも あの笑顔を見た瞬間に何て言うんだろうな…。撃ち抜かれたんだよ。…あぁ俺はこの子の笑顔を一生見ていくんだろうなって。…漠然とだけどな。』
それはあの当時の京介さんからは想像もできないほどの言葉で
『なにそれ。ビビビッって感じのヤツ?』
『なんかわかる。俺もさ幸乃がマネージャーやりたいって体験入部で来たときに 俺はこいつと付き合うんだろうなぁ…って思ったもんな。』
そういえば俺もあるかな。
美紀とはじめて手を繋いだあのとき この手を一生守ってかなきゃならねぇなぁって。
『…俺まだそういう経験ねぇし。』
拗ねるのはなんだかんだ言いながら特定の彼女を作ろうとしない佑樹さんで。
『佑樹もいつか現れるよ。あぁ あのとき言ってたのはこの事かって…。』
長谷川さんは佑樹さんの肩に腕を廻して
『直也 お前その続きも知ってんだろ?どんな手を使って落としたのか早く話せよ。』
『もういいですよ…長谷川さん。』
京介さんはそんなことを言うけど
『それで当日ですよ。…来たんですよ。運命の女性が。』
『大袈裟だっつうの。』
大袈裟じゃないですよ。
だってあの日誰よりも早く球場に来てたことを俺は知ってますから。
