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あなたの色に染められて

第35章 幸せのタネ


♪~♪~

『…チッ…うるせぇなぁ。』

やっとこの柔らかな感触を感じることができたのに ベッドサイドから鳴り響く俺のスマホ。

…直也…かよ。

こいつなら後でかけ直せばいいと放っておいといたんだけども

…勘弁してくれよ…。

ベッドサイドのランプだけか灯されたこの薄暗い部屋。

固くなったピンク色の可愛い粒を味わっているのにしつこいぐらいに鳴り響く電子音。

『なんかあったのかもよ?』

…ったく。これじゃ集中できねぇつうの…

『…チッ…。』

文句の一つでも言ってやろうなんて思いながスマホに手を伸ばし

『…なんだよ。』

璃子の髪を撫でながらずいぶん冷たく言い放った。

でも 直也はそんなのお構いなしで

「もしもし 京介さん?すいません。璃子ちゃんいます?」

ずいぶんと切羽詰まった様子で

『ハイハイいますよ。俺の腕の中に。』

イヤミを言ってしまうほど 俺はせっかくの雰囲気をぶち壊されたことにイラついていて

「すいません 代わってもらえませんか?」

スマホから漏れる声で璃子は首を傾げて 腕を伸ばし

『…もしもし璃子です。』

「ごめんね夜遅くに。」

ホントに恨みでもあんのかって。

璃子の大きな膨らみに手を添えて 額に瞼に頬にとキスを落として

『どうかしました?』

どうしたもこうしたもねぇよ。…ハァ…。早く続きをさせろって

「美紀が…今…。」

『…美紀がどうしたの?!』

璃子は俺の手を振り払ってガバッと体を起き上がらせて 俺の目をすがるように見つめながら腕を掴む。

「…産まれた。さっき…元気な男の子。」

『…ホント!?』

不安だった瞳が一気に花が咲き涙をボトボト溢して

「…直也さん…おめでとうございます。良かったぁ」

『母子ともに元気で…璃子ちゃんには連絡しておいてくれって美紀が言うから…こんな遅くになっちゃったけど…。』

「いいんです。報告してもらってありがとうございます。」

冷たくなった璃子の肩をそっと抱きしめて涙を拭ってやる。

『…はい。じゃあ 面会時間に一番に行きますから。』

漏れてくる直也の声は震えていた。あいつもとうとうパパさんですか。

『京介さん産まれたって!』

電話切るなり 満点の笑顔で俺に抱きついて肩を濡らす。

…これじゃ直也を怒れねぇな。

おめでとう…新米パパ。

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