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あなたの色に染められて

第35章 幸せのタネ


『なにやってんだよ…。』

『京介くん…。』

璃子を送り届けた帰り道。俺は遅い時間だとわかっていながら長谷川さんの家に向かった。

『京介くん。指輪をあげなかったってことは…プレゼントは何もあげてないの?』

『…。』

『京介…。美紀ちゃんのお見舞いと天気が悪かったからディズニーは延期 っていうのは何も言うつもりはねぇよ。でもさぁ…。』

そう。結局 プロポーズ出来なかったオレ。

『だって…。』

夏樹さんの店の雰囲気もよかったし 帰りの車の中でも何度唇を重ねたかわからないほど条件はバッチリだったのに。

『だってもクソもねぇだろ。』

『散々 女の子と遊んできたくせに璃子ちゃんとなると全然ダメなんだから。』

俺のダメなところも全部知ってる二人。だからこそ いい報告をするつもりで帰りに寄るなんて宣言してたんだけど。

『璃子ちゃん待ってたんじゃない?…美紀ちゃんの赤ちゃん見て私もそろそろ…なんてさ。』

『…。』

幸乃さんは腕を組んでさっきから溜め息混じりに俺を攻め立てる。

『あぁ。可哀想。』

まるで璃子の気持ちを代弁してるかのよう。

『…スイマセン。』

『まぁ…俺もそうだったけどプロポーズは本当に大変なんだよな。タイミングとかシチュエーションとか…な?』

あまりに責められ続けてる俺を見て 長谷川さんは助け船を出してくれるけど

『シチュエーションは二人の思い出がたっぷり詰まったお店。タイミングは璃子ちゃんとやっと二人で迎えられる誕生日。…完璧じゃない?…って言うか 今日しなかったらいつするのよ。』

幸乃さんの怒りは治まるはずはない。

「璃子ちゃんも京介くんとの未来を望んでるよ。」

直也たちの結婚式の日 一緒に風呂に入って 璃子の気持ちを幸乃さんは直接聞いてて。

『確かにね 家族も大事。でも私ならチーが好きな人のところに嫁げるなら快く送り出せるけどな。』

『そうだな。結婚したら全く会えないわけじゃないだろ。幸乃だってしょっちゅう実家帰ってるし。…おまえ少し考えすぎなんだよ。』

二人の言ってる意味はわかってる。でも言えなかったオレ。

『好きになりすぎちゃったんだね。…はじめて愛した人なんだもんね。』

『おまえのペースでいいじゃねぇの?』

やっぱりこの二人には

『今日は泊まってけ。幸乃ビールビール!』

頭が上がらねぇや。

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