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あなたの色に染められて

第36章 mistake


なんとか仕事を終わらせて ダッシュで車に乗り込み

…ヤバイ22時かぁ。

車で5分もかからない距離。別に歩いて出勤してもいいんだけど 毎朝璃子を駅まで迎えに行くという使命のある俺はこの距離で車通勤。

駐車場に車を停めてエレベーターに乗り込んで いつもなら何も考えずに鍵を開けて入るけど 今日は璃子が先に帰ってくれてるから

…ピンポーン…

……。

『…あれ?』

…ピンポーン…

………。

…風呂にでも入ってんのか?…


仕方なく鍵を取り出して

…ガチャ…

『ただいま~。璃子?』

リビングに続く扉を開いてキッチンに顔を出し

『…あれ?…璃子?』

まさか もう寝ちゃった?

『…璃子。…いない。』

リビングにもキッチンにも電気は付いていて

『…風呂か?』

洗面所を覗いても真っ暗闇が広がっていて

『…はぁ?…』

…アイツ何やってんだよ…。

キッチンをもう一度覗いてみると下ごしらえが終わった食材たちがラップに包まれて置いてあり あとは上手に料理してもらうだけの状態で

『…なんだよ。』

ソファーに大袈裟に座りネクタイを緩めた時 ローテーブルにきれいに並べられたピンク色が目に入った。

『…うわぁ…マジかぁ…。』

それは この間の出張で取引先の専務に連れていかれたキャバクラの女の子の名刺。

スマホを手にとり璃子に電話をかけるけど

「お掛けになった電話は現在 電波の届かないところにおられるか 電源が…ブチッ。」

玄関の靴を確認しても

『ねぇし。』

もう一度電話片手にくまなく部屋を探してみるけども よく見れば璃子のバックもないし

『…ハァ…誤解だって…。』

二人で笑顔で写る写真はご丁寧に伏せられてるし。

『…勘弁してよぉ…。』

俺は頭を抱えてこの状況を整理した。

クリーニングを頼んだスーツの中に入っていたであろうこの名刺たち。

『…電源ぐらい入れてくれよ。』

何度も繰り返される無機質な案内メッセージ。

男に免疫のないアイツのことだから たぶんキャバクラ=浮気とか思ってんだろうな。

こっちは別に仕事の付き合いで行ってるだけだっちゅうのに。

『…はぁ…マジどうしよ。』

~♪~♪

電話を切った瞬間になり響いたベルの音。

『…もしもし…璃子?』

「…。」

こんなに慌てて電話に出たのは生まれてはじめてだった。

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