あなたの色に染められて
第38章 サプライズ
『ありがとうございました!』
なんとか無事に見学会を終えた私たちは最後のお客様が売店を後にしたのを確認してやっと一安心。
『こんなに売れるなんてねぇ。璃子ちゃん商売上手なんだから。』
『いやいや…本当に疲れました。』
GW初日。15時からの見学会を京介さんの助けを借りてなんとか無事に終わらせることができた。
『まぁ 初日にしては上出来だろ。親父たちも喜んでたしな。』
紋の入った揃いの法被を着て奮闘した私たち。 空いた棚にお酒を補充する京介さんはとても満足そうで
『京介くんが発案したお蕎麦屋さんも大盛況みたいじゃない。お客さんが「素敵なお店だった」って 誉めてたわよ。』
『この見学会と一緒に蕎麦屋も軌道に乗ってくれたらいいんだけどな。』
GWより少し早めにオープンしたお蕎麦屋さんはおかげさまで繁盛しているようで お昼にはお店の外にまで列を作って待ってくれてた人もいたりして
『大事にしたいですよね。また 足を運んでくださるように。』
『そうだな。広告をバーンと打ってる訳じゃねぇから 一過性にならないようにしないとな。』
売店のおばさんに挨拶をして 事務所に続く中庭を通ると
『璃子 綺麗だろ。』
立ち止まった京介さんの視線の向こうに
『うわぁ 山に沈んでいくんですねぇ。』
茜色の空
いつもこの時間はパソコンと睨めっこしていて気付かなかった。
『京介さんはこの夕焼けを見て育ったんですね。』
川沿いの土手越しに見える山の向こう。ゆっくりと沈んでいく大きな太陽。
『璃子がアメリカに居るとき 夕方に売店のおばちゃんとこの夕陽見んのが日課でさ。』
そっと繋がれた手に優しいぬくもりを感じて
『この夕陽見てると璃子に逢えた気がして 俺 毎日すげぇ寂しかったから。』
『私も。夕陽を眺めるとユニホーム姿の京介さんを思い浮かべてました。』
まだ戻ってきて 1ヶ月ぐらいしかたっていないけど あんな寂しい思いはもうしたくない。
『璃子…。もう 俺をおいてどっか行くなんて言うなよ。』
紅く夕陽に染まった京介さんの顔を見上げて 瞳を合わせて
『…はい。』
もう 私たちは大丈夫。
『あ~腹減ったぁ。夜飯なに?』
『どうしましょうか。』
『帰りに買い物して帰るか。』
『ハイ!』
繋いだ手のぬくもりは二人の気持ちと一緒だよね。