あなたの色に染められて
第38章 サプライズ
『なんだよこれ…。』
メンバーが足りないから大至急球場に来い!と長谷川さんからの連絡を受けた俺は 午前中の仕事を終わらせたのと同時に車に乗り込んで現地に向かった。
『京介~!お誕生日おめでとう!!』
球場に入ると真っ先に眼に飛び込んできたのはベンチの真上に “HAPPYBIRTHDAY!”なんて書かれた大きな横断幕。
そしてベンチのなかは折り紙で作った輪っかのチェーンやら紅白のペーパーフラワーで彩られていて
『…マジかよ。』
まるで小学生の誕生日会。
俺の半歩後ろで してやったりな満面の笑みを浮かべて目を輝かせてる璃子に
『主犯はおまえか?』
『…エヘヘ。』
どうりで最近スマホをいじってると思ったんだよ。
『でも すごーい!ここまでしてくれてるなんて思いませんでした。皆さんありがとうございます!』
璃子の特権なんだろうな。本当にコイツらみんな璃子の頼みだからこんなにも頑張ってくれたんだな。
『ねぇねぇ 京介さん!サプライズ成功?』
腕を掴んで笑顔を向けられれば
『ハイハイ…大成功ですよ。』
『やったー!!』
こいつには本当に敵わない。
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『よーし!時間もないし相手チームを待たせるのも悪いからスタメン発表するぞ。』
長谷川さんが声を掛けると
『1番 ライト 山本
2番 ショート 戸口
3番 キャッチャー 佑樹
4番 ピッチャー 京介……。』
…え…。
『はあ?…ちょっと待ってよ長谷川さん!俺がなんでピッチャー?』
ベンチに座っていた京介さんは立ち上がり目を丸くして
『俺からのサプライズだよ。久しぶりに投げてみろよ。バースデー登板なんてなかなか粋だろ?』
『…マジかよ。』
今まで何度も試合を見てきたけど京介さんがマウンドに立っているところは見たことがない。
唇を尖らせたままグローブを手に取ると私の方をチラッと見てクスリと微笑み
『わかりましたよ!投げりゃいいんでしょ!投げりゃ。』
ボールを一つ取ると私の頭をポンとグローブで叩いて
『佑樹!肩作るから付き合え。』
『OK!』
佑樹さんを連れてブルペンに走っていった。
『璃子ちゃん 心配しなくて大丈夫よ。京介くんは昔ピッチャーだったんだから。』
『…本当ですか?』
長谷川さんからの粋なサプライズは私の胸をときめかせた。