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あなたの色に染められて

第39章 ハナミズキ


『ねぇ パパは?』

『お庭じゃない?』

京介さんが挨拶に来る日になってもパパの態度は変わらなかった。

リビングのカーテンを開けると パパは庭で一番陽の当たる場所に植えられているハナミズキの前に立っていて

『そっとしておいてあげなさい。』

ママは私の背中をポンと叩いてキッチンに向かった。

もうすぐ 京介さんがやって来る。ちゃんと席についてくれればいいんだけど…。

不安な気持ちを抱えたまま私はママのお手伝いをしにキッチンに向かった。

『パパは反対なのかなぁ。』

取り皿を用意しながら不安な気持ちをママにぶつけてみると ママは寂しそう微笑んで

『ママだってパパと一緒よ。大切に育ててきたんだもの。璃子が幸せになるのはすごく嬉しいことだけど それと同じぐらい寂しいのよ。』

『…ママ。』

『でも大丈夫。璃子が選んだ人なんでしょ?京介くんならパパの塞がれた心の扉を開くことが出来るはず…二人を信じましょ?』

こういうときにいつも思うことがある。それは微笑むママの偉大さ。

いつもはパパに甘えてフワフワしてるのに 大切なときは大きな心で包み込んでくれて

『私 絶対に京介さんと幸せになるから。』

『ハイハイ ママにまでノロケなくたっていいから。』

煮物を盛り付けながら微笑むと

…ピンポーン。

『…あっ!』

『はーい!…ほら 未来のダンナ様がご到着よ。』


***

『失礼します。』

リビングの隣の和室に京介さんを案内した。

濃紺のスーツに誕生日に私がプレゼントした淡いピンク色したネクタイを締めて

 京介さんの実家に挨拶に行ったときと同じように座布団を避けて畳に座りパパが部屋に来るのを一人待っていた。

『はい どうぞ。』

私は冷たいおしぼりと麦茶をテーブルに並べて

『…フゥ…。』

何度も深呼吸をする京介さんの背中をそっと擦って

『マジで緊張すんだけど。』

爽やかな風が窓から入る5月の終わり。額の汗をおしぼりで拭う京介さんは本当に緊張しているようで

『大丈夫?』

私からそっと重ねた手のひらを一瞬だけギュッとお互い握り合って

『嫁さんをもらうのは大変だ。』

『…ウフフ 頑張ってください。』

手を離して二人で微笑みあったそのとき

…スウッ

『ごめんなさいね お待たせして。』

背後の襖が開くとパパがママと一緒に入ってきた。

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