あなたの色に染められて
第39章 ハナミズキ
『なに笑ってんのよ。』
『いや 別に…。』
美紀に咎められても俺は緩んだ頬を戻すことが出来なかった。
『だって…璃子ちゃんが京介さんを困らせてる。』
キッチンで美紀から事情を聞いていたとき ふと京介さんたちに視線を向けるとあの様
口を尖らせ不貞腐れてる璃子ちゃんをあのオレサマ京介さんがなだめてるなんて
『二人を最初から見てるの俺らだけじゃん?こんな光景が見れるなんて…なんか変な感じだよ。』
そう 俺たちが一番京介さんたちを見てきたんだ。だからこの光景がやたらに嬉しくて
『やっと 結婚するんだもんね。璃子もアメリカから帰って来てから随分とワガママ言い始めたみたいだし。』
屈みこんでいた京介さんはヘソを曲げた璃子ちゃんをなだめるように腰を下ろして長期戦の構え。
『相変わらず惚れてるのは京介さんなんだな。』
『それに気づいてないんだよねぇ…璃子は。』
ホント 歴代の彼女がこの光景を見たら目を丸くするだろうな。
『なぁ 美紀?二次会の話 少しネタバレしろよ。京介さんがあれだけ俺らに頭下げてんだから。』
そうなんだ。京介さんは璃子ちゃんに任せっきりだった訳じゃないんだ。
大きな結婚式になるから二次会は璃子ちゃんも楽しめるアットホームな感じにしたい だなんて柄にもない台詞を今日も幹事の俺らに話していた。
とにかく日にちを決めないことには二次会の会場も押さえられない。
だからそのために早く動きたい京介さんと 大きなお式になることで戸惑い悩む璃子ちゃん。
お互いが思いあった結果 同じ方向を向いてるのになかなか絡まない糸
『そうだね。あれじゃずっと平行線のままだね。』
美紀は新しいコーヒーを淹れると ニコリと俺に微笑んで 甘い悩みに頭を抱える二人のもとに歩んでいった。
***
ほらな あんなに唇を尖らせてたのに今は真っ白な歯を見せて京介さんの膝に手を置いて
『そういう式だから 友達呼ばないで二次会に賭けてみるっていうのはどう?』
京介さんの提案にうんうんと随分とご満悦に頷いて
『璃子ちゃん俺らがしっかり二次会仕切るから。』
『はい!よろしくお願いします。』
ホント この笑顔には敵わない。マジで京介さんが羨ましい なんて美紀には言えないけど。
京介さんに手を引かれて玄関を出ていく二人を見て 俺も美紀の手にそっと指を絡めた。