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あなたの色に染められて

第40章 誰かのために


『遅刻するかと思ったんですからね!』

『…アハハっ…でも ゆっくり寝れただろ?』

少し早めに昼休みをとった俺たちはラーメン屋まで歩いて向かった。

『ちょっと…誰かに見られたら…。』

『いいだろ別に。』

璃子の手を掬うように絡めてギュッと握って

『だって ご近所さんの目もあるし…。』

『誰もいねぇじゃん。』

戸惑いながらも頬を染めて俺の手を握り返す璃子。

…っていうか…俺 寝不足なんですけど…。

結局あれから変な胸騒ぎに襲われて何度も時計を確認しながら朝を迎えた。

だって

“月曜20時○○駅で”

なんてメッセージを目にしてしまったからなわけだから

○○駅は璃子の最寄り駅。俺の目が届かない場所。

俺が仕事にかまけて璃子を放っておいた間にセンセイはまた俺の大事なオンナに急接近?

今さらアメリカからわざわざなんだって。

小さな口を尖らせてフーフーと麺を冷ましながらラーメンをすすり上げ満足そうにニッコリと笑うコイツ

『ねぇ 炒飯一口ちょうだい?』

『ダメ。』

『この間も結局食べさせてくれなかったのにぃ。』

口を尖らせてブーブー文句を言うコイツは俺のモヤモヤはわかっていないご様子。

『何でも言うこと聞きますから 一口だけ…。ね?』

顔の前で手を合わせ 炒飯一口に自分の体を差し出すコイツって ホントに…。

『じゃあ 月曜泊まって。』



ラーメンをすすり上げながら私の方を見もしないで呟いた一言。

やっぱり…。

『京介さん?』

炒飯をレンゲによそって私の口の前に差し出して

『食ったら言うこと聞くんだろ?』

重なる瞳は久しぶりに見た拗ねたあの目。

『早く食えよ。それとも俺より先生の用事の方が大事なわけ?』

ほらね…。朝から溜め息とアクビばかりの京介さん。なんとなくおかしいと思ったんだ。

私は箸を置くと京介さんの方をまっすぐに向いて

『サラがね たまたまこっちに来ることになった先生に結婚祝いを託したらしいの。だからそれを受けとるだけです。』

でも そんな言葉だけじゃ京介さんは納得してくれないのは知ってるから

…パクっ…。

『おいしぃ~!約束通り受け取ったら京介さんの部屋に戻りますから。』

クスッと笑った京介さんはもう一口レンゲに炒飯をよそって

『もうひとつ言うこと聞いてよ。』

イタズラに笑った。

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