
あなたの色に染められて
第40章 誰かのために
『ホントにこれ一枚ですか?』
バスルームから顔を出して京介さんにダメ元で聞いてみる。
『当たり前だろ。』
待ち構える京介さんは意地悪モード全開でビール片手に私の登場をお待ちのご様子。
『…はぁ…まったく…ちょっとご飯食べただけなのに。』
『何か言いましたぁ?』
口角をくっとあげられてニヤリと笑えばもう逃げられるわけはない。
『言ってません!!』
扉をバタンと閉めて 大きな溜め息を一つ吐いて
久しぶりに発動した京介さんのヤキモチにため息を溢して。
『…マジかぁ…。』
久しぶりのアメリカの話。聞きたいことは山ほどあるじゃない?
虐めモード全開になった今 後悔してももう遅いけど…
湯気で曇った鏡にボンヤリ映る私。見えなくて正解だったかな。
もう一度漏れた大きな溜め息と一緒にドアを開けた。
…カチャ…。
『…こっち見ないで下さい。』
『やだ。』
全身を真っ赤に染めたその肌は風呂上がりのせいじゃねぇよな?
飯でも食ってくれば?なんて確かに言った俺だけど まさか本当に食ってくるなんて
まぁ 積もる話もあるだろうけど おまえはもう俺の婚約者。向こうの親友からのプレゼントを貰うためとはいえあの時間の帰宅はねぇだろ。
『って言うか 見えねぇ。おまえ後ろ向けよ。』
『…イヤです。』
そんなわけで ただ今璃子は…裸でエプロン…というオーソドックスなスタイルでお仕置き中。
『へ~ 反抗すんだ。』
ホントに虐めたくなる。
俺はソファーの背に片腕を回して脚を組みまるで王様のよう。
『…璃子ちゃん?俺腹減ってんだけど。』
真っ赤に染まった頬をさらに赤く染めて 距離にして1.5m。璃子は洗面所からキッチンまで忍者のようにサッと移動して。
チラチラこっちを気にしながらリズミカルな包丁の音を奏でる璃子に視線を移すけど対面キッチンは腰から下を隠した。
だから後ろにある冷蔵庫を開ける時にピンク色に染まった背中と脇からはみ出しそうな胸がチラリと覗く程度。
腹を満たすのが先か 心を満たすのが先か…。
『ちょっと!こっち来ないで下さい!』
俺は堪らず腰をあげてキッチンの入り口に凭れかかり エプロンの隙間から覗く可愛らしいヒップラインを眺めながら残りのビールを飲み干した。
…こりゃ飯は後だな…。
騒ぐ璃子を抱きしめ…唇を塞いで黙らせた。
