
あなたの色に染められて
第40章 誰かのために
白い微睡みの中をさ迷っていると
『動くな。垂れるだろ。』
京介さんは私のお腹の上をティッシュで拭い取ってくれていた。
『くすぐったい。』
『そうか?』
意識が飛ぶ直前にふと思った。ナカで出されたらどうしようって。
結婚式は来月の終わり 明日も料理の最終確認や会場のセッティングのことで式場で打ち合わせ。
だから もう妊娠のこととかそこまで気にしなくて良いのかなって 私の考えすぎなのかなって。
でも 京介さんは達する直前に優しく微笑んで…
今に至る…って感じ。
『ウフフ…やっぱりくすぐったいです。』
『我慢しろ。』
視線を合わせた京介さんはいつもの優しい瞳で微笑んで
『おまえ動ける?』
なんて 散々虐めておきながら ことが終われば私の髪を優しく撫でさっきとは真逆に体を気遣ってくれた。
『あの…ひとつ聞いてもいいですか?』
『ん?』
私の質問を聞くと額にキスを落としながら答えてくれた。
『あの着物着たいんだろ?』
その言葉はやっぱり私を想ってくれる優しい言葉だった…けど
『ここまできたら 初夜までとっといた方が燃えるだろ。』
なんて 狭いソファーの上で抱きしめてもらいながら また悪い顔して微笑む。
でもね 私のことを考えてくれてるって 初めて体を重ねたあの日からちゃんと感謝してるんだよ。
…ぐぅ~…。
『…あ…。』
時計を見るともう22時を回っていた。
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強引に手を引かれ 時間短縮にと二人でシャワーを浴び キッチンに並んで相変わらずな不器用な手つきで手伝ってくれて
『あ~。旨い。』
レタスをちぎっただけなのに満足そうに大きな口を開けて頬張って
『体を動かしたあとの飯は特に旨い。』
なんて 頬を染める私を見ながら イタズラに笑った。
でも こんなやりとりがとても幸せで
『あっ!私のエビ!』
『だらだら食ってるおまえが悪い。』
結婚したらこんな幸せなやりとりを毎日味わえるんだって。
そう思ったら自然と涙が溢れてきて
『は?…なんでエビ盗られたぐらいで泣くんだよぉ。』
イスから立ち上がって私の隣にしゃがみこんで 困った顔して私の頭を撫でて
『悪かったよ。明日好きなもん食わしてやるから…。』
…幸せすぎて涙が止まらないんだよ…
なんて いつも意地悪ばっかりされて悔しいから言わないよ。
