
あなたの色に染められて
第40章 誰かのために
『ちょ…ちょっと待て。』
淡々と話す佑樹さんを征したのは やっぱりリーダーの長谷川さんだった。
顔を上げた佑樹さんは俺たちの呆気にとられた表情を見て小さく肩を上げると
『こうなるってわかってたから言えなかったんだよ。』
小さく溜め息をついた。
考えてみると俺たちいつからこのメンバーで集まるようになったんだろう。
そうだ。璃子ちゃんが絡んでからだ。
それぞれ個々に仲良かった俺たちが璃子ちゃんを通していつの間にかこのメンバーで連みだしていた。
その璃子ちゃんを短い期間だったけど苦しめた彼女。まぁ 俺たちのアイドルを苦しめた訳だから必然的に萌は悪役になってしまうよな。
『ここには…いや おまえらには会わせないから安心しろよ。』
また淡々と話す佑樹さんには覚悟のようなものがちゃんとあった。
俺以外の誰もがそうだと思ってたけど 佑樹さんに彼女が出来たらもちろん仲良くしたいって思ってた。
っていうか それが当たり前だと思ってた。
でも 相手は一匹狼の萌ちゃんで…。
溜め息混じりに幸乃さんが微笑むと
『佑樹…萌ここに呼べよ。』
しらっとした顔して言葉を発したのは他でもない京介さんだった。
『…京介?』
『おまえが本気で選んだオンナなんだろ?だったら遠慮しねぇで連れてこいよ。』
それはそれは優しく微笑んで 肩までポンと叩いちゃって
でも 女性陣はそうはいかない…。
『ねぇ 京介くん…。それじゃあ璃子ちゃんが…。』
そりゃそうだよな。
『璃子はそんなバカな女じゃない。佑樹が惚れた女ならどこの誰だろうと迎え入れるよ。』
戸惑う俺たちだけど 京介さんの言葉には根がしっかりと張っていて
『璃子だぞ?手叩いて喜ぶに決まってんだろ。』
その状況が一瞬で俺たちの脳裏に浮かんだら
『…だな。』
俺らみんな 佑樹さんの顔見て微笑んで
『早く電話してあげなさいよ。』
幸乃さんは俯く佑樹さんをせっついて
『着いたら 馴れ初め聞かねぇとなぁ。』
長谷川さんはクスクスと笑いながら もう尋問する気満々で
『あっ!璃子も呼ぶ?』
璃子ちゃんに内緒の話をするために集まったはずなのに
『呼ぼうぜ。そろそろお袋から解放してやらねぇと。』
早速 スマホ片手に璃子ちゃんと連絡をとる京介さん。
その反対で佑樹さんはハニカミながら萌に電話をしていた。
