あなたの色に染められて
第40章 誰かのために
『京介さんはどんなのが好きかなぁ。』
助手席でウエディング雑誌を捲りながらドレスを選ぶ璃子は
『やっぱり どうせ着るならAラインのドレスかなぁ。ねぇ 美紀はどう思う?』
どうせ私の意見なんか聞かないくせに…。
『スワロフスキーかぁ。』
このあとの展開を知らない璃子は幸せ一杯のの悩みにぶち当たっていた。
璃子は二次会当日にドレスを着て京介さんにサプライズするつもりだったけど
『ほら着いたよ。』
雑誌片手にルンルン気分でお店のドアを開く璃子だったけど
『すいません…高円寺ですけど。』
『いらっしゃいませ。高円寺様ですね。お連れ様がお待ちですよ。』
『お連れ…様?…』
店員さんが案内してくれたその先には
『遅ぇよ。』
ソファーに身を沈め長い脚を組んで作戦成功とばかりにニヤリと微笑んだ 愛する未来のダンナ様がお出迎えしてくれるわけで
『俺にサプライズなんて100年早ぇよ。』
『うそぉ~ 驚かせようと思ったのに~!』
口を尖らせてホッペをブーッと膨らまして学生の頃からのお決まりのポーズで私を睨み付けて
この間こっそり決めた二次会での璃子へのサプライズ
『一緒に選んだ方が楽しいよ?』
『そりゃそうだけど…。』
まだ口を尖らせる璃子にはバレてはいないご様子で
『美紀ちゃん ありがとな。直也にもよろしく伝えてよ。』
『え~。帰っちゃうの?』
『ウフフ…愛する家族が待ってますから。じゃあね!』
そうよ。私が居たってしょうがない。二人の結婚式だもの。二人で仲良く決めればいいの。
***
『じゃーん!』
まったくこいつは…
『それもいいんじゃない?』
『もう ちゃんと見てくれてます?』
何枚着たら気が済むのやら。
『見てますし ご希望通り写真まで撮ってますし。』
どれを着てもまるで人形のように愛らしくて
『どうしよう。』
ドレスには全然興味なさげだったのに
『やっぱり最初のかなぁ。』
本当は我慢してたんだなって 気付いてやれなかったことを反省して
『悩むぅ。』
かなり長丁場になりそうな雰囲気だけど その悩んだ顔も俺の心を擽るから
『全部可愛いよ。』
最後まで付き合う覚悟を決めて 素直に言葉に紡げば 頬をピンク色に染めちゃって
『ほら次。』
『は~い!』
本当に可愛い俺の嫁さんだ。