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あなたの色に染められて

第41章 あなたの色に染められて


スクリーンの中の二人が向かい合ってマウンドに立つとそこで画面は切り替わった。

『あ…これって…。』

紺色のポロシャツを着た京介さんと白いワンピースを着た璃子ちゃんの後ろ姿が写し出され

『璃子ちゃんはわかったかな?』

京介さんに引っ張られるように手を繋ぐ二人の後ろ姿。

『これは俺と美紀と4人で初めて飯食いに行った帰り道。美紀が撮った 二人がたぶん初めて手を繋いだ瞬間だと思います。続いてはこちら… これは付き合いはじめの頃かな。』

どんどん切り替わっていく写真の数々はどれも微笑ましい二人の姿。

『ねぇ これって優勝した時の。』

『これは球納めか。』

不思議なものでこの二人の後ろ姿は何かしらの形で誰かのファインダーの中に納められていて 声を掛けたらこれだけの写真がパッと集まった。

『あっ…ヘルメット!』

『おまえを忘れてるときか…。』

そうだったよね。小さな洗い場で肩を並べて 忘れているはずの愛しい存在を体のどこかはちゃんと覚えてて

『やだ…私顔グシャグシャ。』

離れた二人がやっと想いを通じ合えたあの夜の球場も

『後ろ向いてても膨れっ面なのがわかるな。』

いつもの居酒屋で京介さんがまるで座椅子のように包み込んで座るシーンも…。

そのどれもが二人の気持ちが溢れてた。

『京介 璃子ちゃん。』

マイクを握るのは長谷川さん。

さて リーダーに俺たちの想いを紡いでもらいましょうか。

『俺たちさ こうやって二人の後ろ姿をずっと見てきたんだ。笑顔溢れるときも 苦しんでもがいてるときも。』

『…長谷川さん。』

二人は立ち上がるとまっすぐに長谷川さんの方を向いて

『あれだけの苦難を乗り越えてきたんだ。おまえらならもう大丈夫だよ。』

スクリーンの画面が最初の球場に切り替わり 京介さんはひざまづき璃子ちゃんを見上げて

「直也!泣くな。声が入る。」

「だって…やっと…ですよ?」

その時の俺たちの声はしっかり会場に響いてしまってるけど

野球の神様の見守るそのマウンドの上で微笑みあって誓いのキスを交わす二人。

『いいか!京介!泣かすなよ!一生賭けて幸せにしろよ!わかったか!!』

『…格好つけやがって。』

目に光るものを蓄えてニヤリと微笑む京介さん。

『返事はっ!?』

『ハイっ!!』

そうですよね…先輩の言うことは絶対ですから。

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